「猫と暮らす部屋作り」で検索すると、キャットウォーク、爪とぎ、日向ぼっこできる窓辺──おしゃれな実例がいくらでも出てきます。ただ、そのほとんどは誰かの家の完成写真で、なぜそれが必要なのかは書かれていません。
編集部が知りたかったのは、「猫の部屋作りで外せないもの」に公的な根拠はあるのかでした。予算にも間取りにも限りがある以上、どこから手を付けるかの順番が要ります。
そこで、環境省が出している2つの資料と、獣医学の国際ガイドラインを読みに行きました。すると、必要なものは公的資料に具体名で列挙されていた一方、日本でよく言われる「猫のトイレは頭数+1個」については、日本の資料と国際ガイドラインで書き方が違うことが分かりました。
くらすけ
猫の部屋って、結局なにを用意すればいいの?キャットタワーは絶対いる?
結論|先に順番だけ
限られた予算と面積で先にやることは、この順番です。
- 脱走できない状態にする(窓・網戸・玄関)
- 上下に動ける場所をつくる(家具でも可。ただし固定する)
- 隠れられる場所を2か所つくる(うち1つはキャリーバッグ)
- トイレの「置き場所」を決める(数より配置)
- 爪とぎを、傷つけられたくない家具より先に置く
- 滑る床に手を打つ
理由を順に見ていきます。1〜5は環境省の資料に、6は同じ資料の別の章に、それぞれ根拠がありました。
「猫の部屋に必要なもの」は公的資料に書いてある
環境省の啓発パンフレット「宣誓!無責任飼い主0(ゼロ)宣言!!」には、「猫に快適な室内環境」として用意するものが図解で列挙されています[1]。
編集部が確認できたのは、次の7つです。
| 項目 | 資料の記述[1] |
|---|---|
| 上下運動 | 「猫は高いところや立体的な移動を好みます。家具や段ボール箱、市販のキャットタワーなどで上下運動できる場所を作りましょう」 |
| 外が見える場所 | 「猫は安全なところから外を眺めたり、動くものを見るのが好きです」 |
| かくれ場所① | 「高いところや狭いところに快適で安心できるかくれ場所を作りましょう」 |
| かくれ場所② | 「キャリーバッグをかくれ場所にしておくと、通院時や災害時の避難にも役立ちます」 |
| 爪とぎ | 「家具を傷つけられる前に、猫の好みの爪とぎを用意しましょう」 |
| トイレ | 「トイレの数は、猫の数+1個が理想です」 |
| おもちゃ | 「安全な猫用のおもちゃを置いておきましょう」 |
そして注記に「※地震等に備えて家具は固定しておきましょう」とあります[1]。
ここで編集部が「なるほど」と思ったのは、キャットタワーが「市販のキャットタワーなど」という例示の扱いになっていることです。資料が求めているのは製品ではなく上下に動ける場所であって、家具や段ボール箱でもよいと明記されています。
つまり、予算がないなら既存の家具の配置換えから始めてよい、というのが公的資料側の書き方です。造作を急ぐ話ではありません。
くらすけ
キャットタワーを買わなきゃ、って思ってたけど、まず「上に登れるか」を見ればいいんだ。
上下運動は「あったら良い」ではなく、室内飼育の条件として書かれている
もう一つの資料、環境省「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」(平成22年2月)には、猫についてこう書かれています[2]。
猫は室内で飼うのが基本です。(中略)上下運動のできる場所やリラックスできる場所を用意するなど、心理的、肉体的なストレスを与えないように配慮すれば室内で飼うことは可能です。
読み方に注意が要る一文です。ここでは上下運動が、インテリアの選択肢ではなく「室内飼育を成り立たせるための条件」の側に置かれています。
同ガイドラインは、猫を飼うときに用意するものとして寝床・トイレ・つめとぎを挙げ、寝床については「猫は狭いところが好きです。体がすっぽり入る程度の市販のハウス、または段ボール箱などにタオルなどを敷きます」「キャリーケージを寝床として使えば、病院に行くときなどストレスを与えずに運ぶことができます」としています[2]。
2つの資料に共通しているのが「キャリーを普段の居場所にしておく」という一点でした。部屋作りの記事ではあまり見かけませんが、公的資料の側は2つとも書いています。
「トイレは猫の数+1」は、どこまで確定した話なのか
ここが今回いちばん書き方が分かれた項目です。
環境省のパンフレットは「トイレの数は、猫の数+1個が理想です」と書いています[1]。
一方、米国猫医療協会(AAFP)と国際猫医学会(ISFM)が出している猫の不適切排泄に関するガイドライン(2014)は、同じ話をこう書いています[3]。
多頭飼育の世帯では、猫の総数より少なくとも1つ多いトイレを置くというのが従来の経験則である。ただしこれは絶対的な要件ではない。(原文: In multi-cat households, the historical rule of thumb is to have at least one more litter box than the total number of cats, although this is not an absolute requirement.)
同ガイドラインは続けて、社会的に仲の良い猫どうしはトイレを共有することもあるとし、「複数の場所に十分な数のトイレを置くこと」を勧めています[3]。さらに、置き場所についてこう書いています[3]。
フードと水をトイレの近くに置かないこと。その場所での排泄を避けさせる要因になる。(原文: Avoid placing food and water close to the litter box, as this discourages elimination in that location.)
編集部の判断
数字そのものは両者で同じです。違うのは位置づけでした。日本の公的資料では「理想」、国際ガイドラインでは「経験則であって絶対条件ではない」。
間取りを考えるときに効いてくるのは、台数よりも「複数の場所」と「食事から離す」のほうだ、と編集部は判断しました。
3匹だから4台、と台数だけを間取りに押し込むと、置き場所は結局まとまってしまいます。ガイドラインが求めているのは分散です。
- 猫が1匹でも、トイレを置ける場所が家の中に2か所あるかを先に見る
- 食器の近くは避ける。カウンター下やパントリー内に食器とトイレをまとめて造作すると、この条件を外す
- 洗面所や納戸のように扉で閉じられる場所を一次候補にしない(人が閉めると使えなくなる)
なお、集合住宅では臭いの問題が近隣に関わります。先の環境省ガイドラインは、集合住宅で暮らす際の注意として「悪臭が近隣に伝わらないよう、トイレの位置に気を配りましょう」と明記しています[2]。トイレの位置は、猫のためだけの話ではありません。
臭いそのものの対策は、[猫のおしっこ臭が壁から消えないときの対処法](https://pet-kurashi.net/2026/08/19/cat-urine-smell-wall/)で壁材まで含めて扱っています。
見落とされがちな「床」──公的資料は犬と猫を分けていない
床が滑る問題は、ふつう犬の話として語られます。
ですが、環境省「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」の「室内飼いの際に注意しなければならないこと」という章には、犬猫を区別せずにこう書かれています[2]。
床材の配慮
フローリングなどで滑って関節を痛めるなどの事故が起きることがあります。滑る場合にはカーペットを敷くなどして、歩きやすくしてあげましょう。カーペットはよく掃除をして清潔にしましょう。ペット専用のカーペットもあります。
この章のタイトルは「犬や猫の健康と安全の確保という観点から」で始まっており、床材の項も犬限定ではありません[2]。
猫の部屋作りの記事で床材が扱われることは多くありませんが、上下運動を推奨している資料が、同時に着地する床の話もしているという点は押さえておいてよいと思います。キャットタワーやキャットウォークを付けるほど、降りる回数は増えます。
床材そのものの比較は[ペット対応床材7種を比較](https://pet-kurashi.net/2026/08/19/pet-flooring-comparison/)に、賃貸でできる範囲は[賃貸でできる床滑り対策](https://pet-kurashi.net/2026/08/20/rental-dog-floor/)にまとめています。
脱走対策を最優先にする理由
順番の1番目に置いたのが脱走対策です。上の資料のどれよりも、取り返しがつかないからという理由が大きいのですが、環境省のパンフレットも具体的な手当てを書いています[1]。
窓や網戸には猫が開けられないようにロックを付けておきましょう。バルコニーには網を張っておくと安心です。人の出入り時に扉から出てしまわないよう注意しましょう。
なお同ガイドラインは、集合住宅について「共用部分となっているベランダには、犬や猫を出さないようにしましょう」としています[2]。マンションで「ベランダに網を張る」を検討する場合、まず管理規約の確認が要るということです。
窓・ベランダ側の具体策は[猫の窓・ベランダからの脱走と転落を防ぐ](https://pet-kurashi.net/2026/08/21/cat-window-escape-prevention/)、玄関側は[猫の玄関脱走を防ぐリフォーム](https://pet-kurashi.net/2026/08/19/cat-escape-prevention-entrance/)で扱っています。
※本記事は住まいづくりの観点から一般的な情報を提供するものであり、個々のペットの診断・治療に代わるものではありません。排泄の失敗や行動の変化が続く場合は、住環境の問題とは限りません。かかりつけの獣医師にご相談ください。
間取りから考えるとき|広さより「縦」と「距離」
ここまでを間取りの言葉に置き換えると、猫にとっての住みやすさは床面積よりも次の2つで決まります。
縦の距離
上下運動できる場所と、高い位置の隠れ場所。同じ広さでも、壁面が使えるかどうかで変わります。壁に付ける場合は下地の位置が効くので、[キャットウォークを造作する費用](https://pet-kurashi.net/2026/08/20/catwalk-construction-cost/)を参照してください。賃貸なら[賃貸でキャットウォークは作れる?](https://pet-kurashi.net/2026/08/24/catwalk-rental/)に耐荷重の実数値をまとめています。
資源どうしの距離
食事・水・トイレ・寝床・爪とぎを、どれだけ離して配置できるか。ワンルームや平屋のワンフロア間取りで難しくなるのはここです。廊下が短く、扉が少ない間取りほど、置き場所の選択肢が減ります。
平屋やワンルームを検討している場合、「猫のスペースを別に取る」より「置き場所を分けられる壁と収納があるか」で見るほうが実務的です。
くらすけ
広さじゃなくて、「登れるか」と「離せるか」。この2つで見ればいいんだね。
よくある質問
Q. キャットタワーは必ず必要ですか。
公的資料が求めているのは「上下運動できる場所」で、手段は家具や段ボール箱、市販のキャットタワーなどと例示されています[1]。製品名で指定されてはいません。ただし、いずれの場合も地震に備えて固定することが注記されています[1]。
Q. 1匹ならトイレは1つでいいですか。
環境省の資料は「猫の数+1個が理想」[1]、AAFP・ISFMのガイドラインは「経験則であって絶対的な要件ではない」[3]としています。編集部としては、台数を増やすことより、置き場所を2か所確保できるかを先に見ることをおすすめします。
Q. 猫用の部屋を1室つくるべきですか。
専用の部屋を求める記述は、確認した資料の中にはありませんでした。むしろガイドラインはトイレを複数の場所に分けること[3]を勧めており、1室にまとめる発想とは方向が逆になります。
Q. 賃貸でもできることはありますか。
上下運動(家具の配置)・隠れ場所・爪とぎ・トイレの分散は、いずれも工事なしで対応できます。工事が要るのは、窓の追加ロック、ベランダのネット、床材の変更あたりです。賃貸の可否は物件ごとに違うため、[賃貸でできる床滑り対策](https://pet-kurashi.net/2026/08/20/rental-dog-floor/)もあわせてご覧ください。
まとめ
- 必要なものは公的資料に列挙されている。上下運動・外が見える場所・かくれ場所2種・爪とぎ・トイレ・おもちゃ、そして家具の固定[1]
- 上下運動は「あったら良い」ではなく、室内飼育を成り立たせる条件として書かれている[2]
- 「トイレは頭数+1」は日本の公的資料では「理想」、国際ガイドラインでは「絶対条件ではない経験則」。間取りで効くのは台数より分散と、食事から離すこと[1][3]
- 床材の配慮は犬だけの話ではない。同じ資料が犬猫をまとめて書いている[2]
- 集合住宅では、トイレの位置とベランダの扱いが管理規約・近隣の問題にもなる[2]
記事だけでは判断できないこと
置き場所を分散できるか、壁のどこに棚を付けられるかは、間取り図と壁の下地、そして分譲か賃貸か(管理規約)で変わります。図面と部屋の写真があれば、どこから手を付けるべきかの整理はできます。
わが家の場合はどうなるか相談する
工事が必要かどうかの切り分けから相談できます。相談は無料です。お見積りは施工会社が現地を見たうえで作成します。
あわせて読みたい
- [キャットウォークを造作する費用|内訳・間取り別プラン・失敗しない寸法](https://pet-kurashi.net/2026/08/20/catwalk-construction-cost/)
- [猫の窓・ベランダからの脱走と転落を防ぐ|「うちは低層階だから」が危ない理由](https://pet-kurashi.net/2026/08/21/cat-window-escape-prevention/)
- [猫のおしっこ臭が壁から消えないときの対処法|掃除の限界とリフォームの判断基準](https://pet-kurashi.net/2026/08/19/cat-urine-smell-wall/)
参考文献・出典
(すべて2026-08-24確認。編集部が公的機関・学会の公表資料を直接確認したもの)
- 環境省 自然環境局総務課動物愛護管理室「宣誓!無責任飼い主0(ゼロ)宣言!!」(平成26年)猫に快適な室内環境のページ https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2609/pdf/05.pdf
- 環境省「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」平成22年2月 https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2202.pdf
- Carney HC, Sadek TP, Curtis TM, Halls V, Heath S, Hutchison P, Mundschenk K, Westropp JL.「AAFP and ISFM Guidelines for Diagnosing and Solving House-Soiling Behavior in Cats」Journal of Feline Medicine and Surgery, 2014; 16(7): 579–598(米国猫医療協会・国際猫医学会) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11148882/

