「猫 隠れ家」で検索すると、買える商品と手作りの作例が並びます。でも、その前の「そもそも要るのか」に答えている資料は、意外と探しにくいところにありました。
国際的な獣医学ガイドライン(米国猫医療協会・国際猫医学会)を読むと、隠れ場所は「あったら喜ぶもの」ではなく、猫の環境に必要な5本柱の1本目として位置づけられています[1]。
そして、そこに書かれていた条件が、編集部の予想と違いました。
猫が脅威になりうるものを見なくて済めば、その猫はより安全だと感じます。全身がすっかり隠れていなくても、です[1](原文: even if its whole body is not fully concealed)
くらすけ
えっ、全部かくれてなくていいんでつか?
段ボールにすっぽり入ってるイメージだったでつ。
「完全に囲われた箱でなければ隠れ家ではない」——この思い込みが外れると、家の中で使える場所がぐっと増えます。押入れ、階段下、家具のすき間。買い足す前に、家にあるものを見直せます。
先に結論
| # | 判断 | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 隠れ場所は「必要なもの」として書かれている | 猫の環境の5本柱(five pillars)の1本目が「安全な場所を用意する」[1] |
| 2 | 全身が隠れている必要はない。「見えなければいい」 | 「脅威が見えなければ安全に感じる。全身が完全に隠れていなくても」[1] |
| 3 | 数は「猫の数だけ」、大きさは「1匹分」 | 「猫の頭数と同じ数以上の、1匹が入る大きさの安全な場所を用意する」[1] |
| 4 | 1か所にまとめない。離して置く | 「複数の安全な場所は、互いに離れた場所にあるべき」[1] |
| 5 | 子猫と高齢猫は「高いところ」が正解ではない | 動きに制限がある猫には「比較的低い位置」か「スロープで届く高さ」[1] |
🔴 編集部の判断を先に書きます。
隠れ家は「置き物」ではなく「配置」の問題です。
同じ猫ハウスを2つ買っても、並べて置いたら1か所です。ガイドラインが繰り返し書いているのは、数・大きさ・離れていることの3つでした。これは商品選びではなく、間取りの話です。
1. そもそも、なぜ「隠れる」のか
ガイドラインは、隠れることを猫の対処行動(coping behavior)として説明しています。
Hiding is a coping behavior that cats display in response to stressful situations and when they want to avoid interaction[1]
(隠れることは、猫がストレスのかかる状況に対して、また関わりを避けたいときに示す対処行動です)
そして、逃げられないときにどうなるかも書かれています。
(猫は)回避または隠れることで応じます。争いは通常、逃げることができない場合の最後の手段としてのみ起こります[1]
🔴 ここが編集部として大事だと思ったところです。
「隠れ場所がない」は、単に落ち着かないという話ではなく、逃げ道がないという話です。多頭飼いで小競り合いが起きているとき、猫を叱るより先に逃げられる場所があるかを見るほうが筋が通ります。
多頭飼いの部屋の分け方は [猫の多頭飼いで部屋を分けるには](https://pet-kurashi.net/2026/09/09/cat-multi-pet-room-divide/) で扱っています。あちらは「高さで逃げ場を作る」話、こちらは「囲われた場所を作る」話です。両方あるほうが選択肢が増えます。
2. 条件は3つ。数・大きさ・離れていること
ガイドラインの記述を、そのまま条件として並べます[1]。
| 条件 | 原文の内容 | 家でどう読むか |
|---|---|---|
| 数 | 「猫の頭数と同じ数以上の安全な場所を用意する」 | 2匹なら2か所以上。1つを共有させない |
| 大きさ | 「1匹が入る大きさ(sized to hold a single cat)」 | 大きい猫ハウス1つより、小さいものを複数 |
| 配置 | 「複数の安全な場所は、互いに離れた場所にあるべき」 | 同じ部屋の隣どうしに並べない |
具体例として挙がっているのは、横倒しにした段ボール箱とキャリーバッグです。
横倒しに置いた段ボール箱は、出入りしやすく屋根もあるため、脅威と感じるものからの安全な場所になります。箱の上に台(perch)があると、猫は安全で守られていると感じられます[1]
キャリーバッグは、猫にとってなじみのにおいがする持ち運べる安全な場所です。中が隠れないもの(例: 開いたワイヤーケージ)は避け、あるいはキャリーの一部に毛布をかけて隠れられるようにします[1]
🔴 キャリーバッグを「普段から出しておく」という考え方は、当編集部が [猫の部屋づくりで本当に必要なもの](https://pet-kurashi.net/2026/08/24/cat-room-essentials/) でも扱っています。そちらでは「隠れられる場所を2か所、うち1つはキャリーバッグ」として整理しました。今回のガイドラインは、その根拠にあたる資料です。
子猫と高齢猫は、条件が変わります
動きに制限のある子猫や高齢の猫には、箱・台・棚は比較的低い位置に置くか、スロープで到達できる高さに置くべきです[1]
「高いところが好き」は、いつでも成り立つ話ではありません。上れなくなった猫にとって、高い隠れ家はない場所と同じです。段差や昇降の考え方は [犬用スロープの選び方](https://pet-kurashi.net/2026/09/06/dog-slope-step/) と重なる部分があります(犬向けの記事ですが、勾配の考え方は共通です)。
3. 押入れは、条件をほぼ満たしています
ここからが住まいの話です。
押入れには、最初から「高さの違う2段」が作り付けてあります。DAIKEN の建築用語集では、次のように定義されています[2]。
| 部位 | 定義(原文の要旨) |
|---|---|
| 枕棚(まくらだな) | 押し入れやクローゼット内に設ける棚。鴨居よりも高い、床から180cm程度の高さに設置することが多く、比較的奥行きが浅い |
| 中段(中段棚・中棚) | 押し入れやクローゼットの真ん中あたりに設置する棚。奥行きが深く、布団を収納するのにも向いている |
🔴 これを1章の条件と重ねると、押入れは「高さの違う安全な場所が2つ、離れて縦に並んでいる」構造になります。
- 中段 = 奥行きが深い → 1匹分の囲われた場所を作りやすい。高さも中くらいで、高齢猫でも届く場合がある
- 枕棚 = 床から約180cm・奥行きが浅い → 高い位置から見張れる場所。ただし若く元気な猫向け
わざわざ買わなくても、条件を満たす場所が家にあることは珍しくありません。
くらすけ
押入れって、猫から見ると2階建てなんでつね。
ただし、押入れを使うなら決めることが3つあります
ここは資料ではなく、編集部の見立てです。
- 戸を開けたままにできるか。猫が自分で出入りできない場所は、隠れ家ではなく閉じ込めになります。襖を外す・引き違いの片側を常時開ける・専用の出入口をつくる、のどれかが要ります
- 中に何を置いたままにするか。布団や衣類と同居させると、抜け毛と爪の問題が毎日続きます
- 湿気と温度。押入れは元々収納で、居場所として設計されていません。戸を閉め切る前提の空間なので、開けたままにするなら中の環境が変わります
1と3は工事の話になることがあります(襖の交換、通気、出入口の造作)。この記事だけでは、自分の家でできるかは決まりません。
猫グッズの収納と居場所の切り分けは [猫グッズの収納](https://pet-kurashi.net/2026/08/30/cat-supplies-storage/) で扱っています。
4. 階段下——メーカー自身が「避けたほうがよい」と書いていました
階段下は「猫の隠れ家に向いている」とよく言われる場所です。編集部も、そのつもりで調べ始めました。
まず寸法です。DAIKEN は階段下スペースをこう説明しています[3]。
多くの場合、長辺は1〜2m程度、短辺は約0.75〜0.8m程度、高さは低い部分で1m未満ほどです。(中略)階段の設計次第では天井の最も高い部分が1.8〜2.0mほど確保できる場合もあり、工夫すれば収納やワークスペース、ペットコーナーとしても活用できます[3]
同社は「ペットルームとして」という項目も立てています。
犬や猫のケージを置いたり、専用の寝床やトイレスペースを設けたりと、ペットのための小さな部屋を階段下につくるケースもあります。コンパクトな空間はペットが落ち着いて過ごすのに適しています。換気扇を付けたり床や壁を掃除しやすい素材にしたりするなどの対策も大切です[3]
ところが、その直後にこう続きます。
ただし、来客を迎える玄関に近いスペースの場合は落ち着かない可能性がありますし、室温も調整しにくい場所でもあるので避けたほうがよいでしょう[3]
🔴 建材メーカー自身が、条件つきで「避けたほうがよい」と書いています。
そして条件は2つとも、間取りで決まってしまうものです。
| メーカーが挙げた条件 | 何で決まるか |
|---|---|
| 玄関に近いか | 階段の位置。猫が選べる要素ではない |
| 室温を調整しにくい | 空調の吹出口から遠い・扉で仕切られている・窓がない |
1章のガイドラインは、安全な場所を「猫が退避できて、守られていると感じられる場所」と定義していました[1]。インターホンが鳴り、扉が開き、知らない人の声がする場所は、その定義から遠くなります。
編集部の判断はこうです。階段下が使えるかどうかは、階段下そのものではなく「階段がどこにあるか」で決まります。玄関からリビングを挟んだ位置の階段下なら候補になりますし、玄関ホールに面していれば、別の場所を探したほうが早いことがあります。
くらすけ
「階段下は猫にいい」って一言で言えないんでつね。
うちの階段がどこにあるか、から始まるでつ。
5. 買う・作る・家の中で見つける——3つの比べ方
サジェストの実測では、「猫 隠れ家 手作り」が月110 と、商品名(ニトリ70・カインズ30)や「100均」(20)より多い結果でした(2026-09-10実測)。作りたい人のほうが多い、という需要の形です。
3つの手段を、1章の条件で並べます。
| 手段 | 数をそろえやすいか | 1匹分の大きさにできるか | 離して置けるか | 住まい側の制約 |
|---|---|---|---|---|
| 買う(既製品) | ◯ 追加が簡単 | ◯ サイズを選べる | ◯ 移動できる | 床の面積を使う |
| 作る(手作り・段ボール等) | ◯ 費用が小さい | ◯ 自由 | ◯ 移動できる | 耐久性・爪とぎで壊れる |
| 家の中の場所を使う(押入れ・階段下・家具のすき間) | △ 場所の数が決まっている | ◯ 仕切れば可 | △ 位置を動かせない | 戸・温度・湿気・出入口 |
🔴 表にして分かったのは、「家の中の場所を使う」だけが、動かせないという弱点を持っていることでした。
だから編集部としては、この順番をおすすめします。
- まず、買うか作るかで「数」をそろえる(猫の数だけ・1匹分・離して置く)
- そのうえで、猫が実際に選んだ場所を観察する
- 選ばれた場所が押入れや階段下だったときに、初めて工事を検討する
逆にしないほうがいい理由があります。造作は動かせません。猫が使わなかったときに、直す方法がないからです。同じ失敗の型は [キャットウォークの後悔](https://pet-kurashi.net/2026/09/09/catwalk-regret/) でも扱いました。先に作って、使われないことがあります。
6. 費用はいくら?
金額は書きません。押入れの戸の交換も、階段下の造作も、現在の間取り・下地・建具の種類で変わり、当編集部が確認した範囲で「相場」として示せる出典が取れなかったためです。
代わりに、費用を決める要素だけ挙げます。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 出入口をどう作るか | 襖を外すだけ/建具を交換する/既存の建具に開口をつくる。[ペットドアは後付けできる?](https://pet-kurashi.net/2026/08/21/pet-door-retrofit/) で、既存ドアへの加工とドア交換の違いを扱っています |
| 中の仕上げ | 元が収納のため、掃除しやすい面材にするかどうか |
| 温度・通気 | 換気の経路を変えるか(DAIKEN も階段下のペットルームで「換気扇を付けたり」と書いています[3]) |
| 棚の造作 | 中段・枕棚を猫用に作り替えるか。壁への固定が絡むと下地の話になります → [壁の下地補強](https://pet-kurashi.net/2026/09/05/cat-step-wall-backing/) |
よくある質問
⚠️ この節の質問文は、当編集部が実測した検索データのうち、住まいに関係するものだけを使っています。実測4件のうち上位2件は猫カフェ等の店名(地名つき)で、住まいの話ではなかったため除いています。残る2件は同じ趣旨の質問でした。
猫に隠れ家は必要ですか?(相対需要58/同趣旨の質問がもう1件)
国際的な獣医学ガイドラインでは、必要なものとして扱われています。猫の環境の5本柱の1本目が「安全な場所を用意する(Provide a safe place)」で、隠れることはストレス状況への対処行動とされています[1]。ただし形は問われていません。「全身が完全に隠れていなくても、脅威が見えなければ安全に感じる」と書かれています[1]。
何個あればいいですか?
ガイドラインは「猫の頭数と同じ数以上の、1匹が入る大きさの安全な場所」を挙げ、「互いに離れた場所に」と続けています[1]。大きいものを1つより、小さいものを複数のほうが条件に合います。
押入れを開けたままにして大丈夫ですか?
当編集部が確認した資料の中に、押入れを猫の居場所にすることの可否を判断したものはありませんでした。言えるのは構造の話までです。押入れには床から180cm程度の枕棚と、奥行きの深い中段があります[2]。元は収納として設計された空間なので、戸を開けたままにするなら、中の温度と湿気の条件が変わります。個々の家で問題ないかは、現地を見ないと判断できません。
階段下は猫の隠れ家に向いていますか?
「階段がどこにあるか」で変わります。DAIKEN は「コンパクトな空間はペットが落ち着いて過ごすのに適しています」としつつ、「来客を迎える玄関に近いスペースの場合は落ち着かない可能性がありますし、室温も調整しにくい場所でもあるので避けたほうがよいでしょう」と書いています[3]。向き不向きが、階段下そのものではなく位置で決まる、という書き方です。
編集部の結論
猫の隠れ家は、買う物ではなく「配置」です。
読み終えて、判断の材料になると考えたのは次の3点でした。
- 完全に囲われている必要はない。「見えなければいい」[1]。この1行で、家の中の候補が増えます
- 数・1匹分の大きさ・離して置く。この3条件は、商品を選んでも満たせません[1]
- 押入れと階段下は、それぞれ違う理由で条件つき。押入れは戸と湿気、階段下は位置(玄関からの距離)と室温[2][3]
そして順番です。先に数をそろえて、猫が選んだ場所を見てから、工事を考える。造作は動かせません。
※本記事は住まいづくりの観点から一般的な情報を提供するものであり、個々のペットの診断・治療に代わるものではありません。歩き方や行動に気になる変化がある場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。
- 高さで逃げ場を作る(多頭飼い) → [猫の多頭飼いで部屋を分けるには](https://pet-kurashi.net/2026/09/09/cat-multi-pet-room-divide/)
- 部屋全体に何が必要か → [猫の部屋づくりで本当に必要なもの](https://pet-kurashi.net/2026/08/24/cat-room-essentials/)
- 猫グッズをどこにまとめるか → [猫グッズの収納](https://pet-kurashi.net/2026/08/30/cat-supplies-storage/)
- ケージの置き場所 → [猫のケージの置き場所](https://pet-kurashi.net/2026/09/09/cat-cage-placement/)
記事だけでは判断できないこと
押入れの戸を外せるか、階段下に出入口をつくれるかは、建具の種類・下地・階段の構造で変わります。賃貸なら原状回復の条件も関わります。
工事が必要かどうかの切り分けから相談できます。間取りと写真を見ながらのほうが早いことが多いです。
→ [住まいの相談をする](https://pet-kurashi.net/soudan/)(無料)
参考文献・出典
- Ellis SLH, Rodan I, Carney HC, Heath S, Rochlitz I, Shearburn LD, Sundahl E, Westropp JL.「AAFP and ISFM Feline Environmental Needs Guidelines」Journal of Feline Medicine and Surgery, 2013; 15(3): 219–230(米国猫医療協会・国際猫医学会)/Pillar 1 – Provide a safe place の Description・Methods・Other considerations の各項を編集部が原文で確認 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11383066/ (確認日: 2026-09-10)
- DAIKEN(大建工業)建築用語集「枕棚」(枕棚=床から180cm程度・奥行きが浅い/中段棚(中段)=押し入れやクローゼットの真ん中あたり・奥行きが深い) https://www.daiken.jp/buildingmaterials/glossary/part/closetshelf/ (確認日: 2026-09-10)
- DAIKEN(大建工業)HomeLife「階段下はどう使う? 定番の収納をはじめ階段下スペースの活用法をご紹介」(階段下スペースの寸法/「ペットルームとして」の項と、その注意書き) https://www.daiken.jp/homelife/article/homelife0079.html (確認日: 2026-09-10)
- ラッコキーワード実測(2026-09-10・当編集部実施)『猫 隠れ家』サジェスト70件/よくある質問4件 — `docs/research-notes/2026-09-10-rakko-keyword-D-18.md`

