「犬 しつけ」で検索されている質問を実測すると、同じ問いが2回、別々の言い方で上位に入っていました(2026年9月11日実測・230件)。
「犬のしつけでやってはいけないことは?」(相対需要62)
「犬のしつけでやってはいけないことは何ですか?」(同30)
編集部は住まいのメディアなので、正直に言うと、この問いに答えられる立場ではないと最初は思っていました。しつけの方法は、トレーナーや獣医師の領域です。
ただ、一次資料に当たってみたら、予想と違うことが書かれていました。
米国獣医行動学会(AVSAB)の見解書は、しつけでよくある困りごととして「飛びつき・吠え・トイレ」の3つを名指ししたうえで、それらは「環境を適切に整えること」で管理できる、と書いていたのです[1]。
飛びつきも、吠えも、トイレも、全部「家の中で起きること」です。
くらすけ
しつけの話なのに、いちばん最初に出てくるのが「家を整えること」でつか?
順番が逆だと思ってたでつ。
先に、結論
- やってはいけないことは、学会が道具の名前まで挙げて列挙している[1]。「なんとなく強く叱る」より具体的です
- 国内の告示も「みだりに、殴打、酷使すること等は、虐待となるおそれがある」と書いており、方向は一致しています[3]
- 環境を整えること(antecedent arrangement)は、学会の文書では「補助」ではなく「すべての計画で検討すべきもの」と位置づけられています[1]
- 🔴 一方、「いつから」「何歳まで」に、国内の告示は数字で答えていません。「適当な時期に」としか書かれていませんでした[3](全5ページを取得して確認)
「やってはいけないこと」に、学会は具体名で答えている
AVSAB の見解書には、What techniques should be avoided in training?(訓練で避けるべき手法は何か)という項目があり、そこに具体名が並んでいます[1]。
| 分類 | 原文で挙げられているもの |
|---|---|
| 痛みを伴う道具 | choke chains(チョークチェーン)、prong collars(プロングカラー)、electronic shock collars(電気ショックカラー) |
| 威嚇 | squirt bottles(スプレーボトル)、shaker noise cans(音の出る缶)、compressed air cans(エアダスター)、shouting(怒鳴る)、staring(にらむ)、”alpha rolls”・”dominance downs”(力ずくで押さえつける動作) |
| 身体的な矯正 | leash jerking(リードを強く引く)、physical force(力を加える) |
| フラッディング | flooding(”exposure”。苦手なものにいきなり大量にさらす) |
そのうえで、こう書かれています。
The learner must always feel safe and have the ability to “opt out” of training sessions.
(学習する側は常に安全だと感じられ、訓練を「やめる」選択ができなければならない)[1]
🔴 もうひとつ、検索でよく見かける言葉についての記述があります。
If a trainer is observed using aversive training methods or if a trainer discusses out-dated ideas such as “dominance”, “leader of the pack”, or “alpha” theories, then clients should be advised against hiring them.
(トレーナーが嫌悪的な手法を使っている、あるいは「優位性」「群れのリーダー」「アルファ」といった古い考えを語る場合、その人に依頼しないよう助言すべきである)[1]
「上下関係を教える」「リーダーになる」という説明は、この学会の文書では “out-dated ideas”(時代遅れの考え)に分類されています。
⚠️ これは AVSAB の見解であり、すべての専門家の一致した見解として書いているわけではありません。出典の範囲を超えないよう、ここは「AVSAB がそう書いている」までにとどめます。
国内の基準は、しつけについて何を書いているか
環境省の告示「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」を全5ページ取得して確認しました。しつけに触れているのは2か所でした[3]。
ひとつめは、すべての家庭動物に共通する基準の中です。
また、家庭動物等の訓練、しつけ等は、その種類、生態、習性及び生理を考慮した適切な方法で行うこととし、みだりに、殴打、酷使すること等は、虐待となるおそれがあることを十分認識すること。
(環境省告示・共通基準より[3])
ふたつめは、犬の章です。
犬の所有者等は、適当な時期に、飼養目的等に応じ、人の生命、身体及び財産に危害を加え、並びに人に迷惑を及ぼすことのないよう、適正な方法でしつけを行うとともに、特に所有者等の制止に従うよう訓練に努めること。
(環境省告示「第4 犬の飼養及び保管に関する基準」4より[3])
🔴 「適当な時期に」——ここが、編集部が今回いちばん意外だったところです。
よくある質問には「犬のしつけは何歳まで覚えれば良いですか?」(31)「犬のしつけは何歳まで覚えるべきですか?」(23)があり、サジェストにも「犬 しつけ いつから」(月480)があります。時期は、確かに検索されています。
しかし国内の告示は、そこに数字を置いていませんでした。「何歳から何歳まで」と書いてある一次資料を、編集部は今回確認できませんでした。(存在しないという意味ではなく、今回当たった範囲では見当たらなかった、という意味です。)
同じ章には、住まいに直結する一文もあります。
犬の所有者等は、頻繁な鳴き声等の騒音又はふん尿の放置等により周辺地域の住民の日常生活に著しい支障を及ぼすことのないように努めること。
(同「第4 犬の飼養及び保管に関する基準」3より[3])
鳴き声が名指しされています。音の問題を住まいの側から減らす方法は[犬の鳴き声の防音対策|「吸音材を貼る」が効かない理由から始める](https://pet-kurashi.net/2026/08/22/dog-bark-soundproof/)にまとめています。
数字で確かめた研究——嫌悪的な手法を使う群で何が起きたか
「やってはいけない」と言われても、実際に差が出るのかは気になるところです。査読論文を1本、全26ページ取得して確認しました[2]。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出典 | Vieira de Castro AC ほか(2020)*PLOS ONE* 15(12):e0225023 |
| 対象 | 家庭犬92頭(報酬ベースのスクール3校からn=42/嫌悪的手法を使うスクール4校から、使用割合が低い群n=22・高い群n=28) |
| 測ったもの | 訓練3セッションの動画(ストレス関連行動・全体の状態)/唾液コルチゾール6検体(自宅3・訓練後3)/認知バイアス課題(訓練とは別の場面) |
結果として報告されているのは、次のとおりです[2]。
- 嫌悪的手法の割合が高い群の犬は、訓練中のストレス関連行動(舌なめずり・あくびなど)が多く、緊張した状態・低い姿勢の状態が多く、パンティングも多かった
- 同群は、訓練後の唾液コルチゾールの上昇が、報酬ベース群より大きかった
- 同群は、訓練とは別の場面である認知バイアス課題で、より「悲観的」だった
- 🔴 使用割合が低い群(Mixed)でも、報酬ベース群よりストレス関連行動が多く、緊張状態が多く、パンティングも多かった
🔴 4つ目が、編集部がいちばん注目した点です。「少しだけなら大丈夫」という群でも差が出ています。
⚠️ ただし、この研究が観察しているのは「トレーニングスクールでの訓練場面」です。家庭内でのしつけ全般に、そのまま広げて読むことはできません。論文の範囲を超えるため、編集部としてもそこまでは言いません。
くらすけ
「叱ると覚えない」じゃなくて、「叱られた場面じゃないところでも、悲観的になってた」って話でつね。
それは家の中の話でつ。訓練の時間だけの話じゃないでつ。
家の側で、先にできること
ここからが当メディアの本題です。AVSAB が名指しした3つを、住まいの側から見るとどうなるか。
Common training issues such as jumping, barking, and housetraining can be managed by arranging the environment appropriately and reinforcing desirable responses.
(飛びつき・吠え・トイレといったよくある困りごとは、環境を適切に整えることと、望ましい反応を強化することで管理できる)[1]
| 困りごと | 家の側で先に見るところ | 当メディアの担当記事 |
|---|---|---|
| 飛びつき(jumping) | 玄関の導線。人が入ってくる場所に、犬が助走できる直線があるか。玄関マットの位置と厚み | [犬の玄関マットの選び方|厚み・重さと、置く前の確認](https://pet-kurashi.net/2026/09/11/dog-entrance-mat/) |
| 吠え(barking) | 刺激が入る場所。窓から通りが見えるか、インターホンの音がどこまで届くか | [犬の鳴き声の防音対策](https://pet-kurashi.net/2026/08/22/dog-bark-soundproof/)/[内窓で犬の鳴き声はどこまで静かになる?](https://pet-kurashi.net/2026/08/22/inner-window-soundproof/) |
| トイレ(housetraining) | 場所。ごはん・寝床との距離、必要な広さ | [犬のトイレの場所|ごはん・寝床との距離と必要な広さ](https://pet-kurashi.net/2026/09/09/dog-toilet-placement/) |
| (共通)落ち着ける場所 | ケージ・ハウスをどこに置くか。人の動線上にないか | [犬のケージの置き場所|リビング・寝室・和室の選び方](https://pet-kurashi.net/2026/09/08/dog-cage-placement/) |
AVSAB は、環境の管理の位置づけについてもはっきり書いています。
Management strategies, including antecedent arrangement, have a vital role in dog training and should be considered in all training and behavior modification plans.
(先行条件の整備を含む管理の方策は、犬のトレーニングにおいて重要な役割を持ち、すべてのトレーニング計画・行動修正計画で検討されるべきである)[1]
「余裕があればやること」ではなく、「すべての計画で検討すべきこと」と書かれています。
🔴 編集部の判断としては、これは住まいのメディアにとって重要な一文です。間取りや家具の配置は、しつけの前提条件のほうに入っている、ということになります。
⚠️ ただし、家を整えれば困りごとが解決する、とは書かれていません。原文は「managed(管理できる)」であり、環境の整備と、望ましい反応を強化することの両方が並んでいます。片方だけで足りるとは、編集部も書きません。
床が滑ることで落ち着いて座れない・立てない、という形で行動に影響が出る場合もあります。床そのものの話は[犬が滑らない床にするリフォーム|「関節に悪い」は本当か、から始める](https://pet-kurashi.net/2026/08/20/dog-non-slip-floor/)にまとめています。
よくある質問
実際に検索されている質問(2026年9月11日実測・230件)から、この記事の範囲で答えられるものだけに答えます。
Q. 犬のしつけでやってはいけないことは何ですか?
A. AVSAB の見解書は、痛みを伴う道具(チョークチェーン・プロングカラー・電気ショックカラー)、威嚇(スプレーボトル・音の出る缶・エアダスター・怒鳴る・にらむ・力ずくで押さえつける動作)、身体的な矯正(リードを強く引く・力を加える)、フラッディングを避けるべきものとして挙げています[1]。国内でも、環境省の告示が「みだりに、殴打、酷使すること等は、虐待となるおそれがあることを十分認識すること」と書いています[3]。
Q. 「上下関係を教える」「リーダーになる」というのはどうですか?
A. AVSAB の見解書では、”dominance”・”leader of the pack”・”alpha” は “out-dated ideas”(時代遅れの考え)として扱われています[1]。⚠️ これは同学会の見解です。編集部として、個別のトレーナーや手法の当否を判定することはしません。
Q. しつけはいつから、何歳まで?
A. 🔴 国内の告示は「適当な時期に」としか書いておらず、数字はありませんでした[3](全5ページを取得して確認)。年齢を数字で示した一次資料に、今回は当たれませんでした。「存在しない」ではなく「確認した範囲では見当たらなかった」という意味です。かかりつけの獣医師に相談するのが確実です。
Q. しつけ教室は何回通えばいいですか? 料金は?
A. 教室の比較・紹介は、このメディアでは扱っていません。(住まいの側から書けることの範囲を超えるためです。)よくある質問では相対需要100・64と高い関心がありますが、編集部が一次資料で確かめられない領域なので、書きません。
Q. 家を変えるだけで、しつけは要らなくなりますか?
A. なりません。AVSAB の原文も「環境を適切に整えることと、望ましい反応を強化すること」と並べて書いています[1]。環境の整備は前提条件であって、置き換えではありません。
Q. 吠える・噛む・トイレなど、個別のことを詳しく知りたい
A. 当メディアで住まいの側から扱っているのは、音([犬の鳴き声の防音対策](https://pet-kurashi.net/2026/08/22/dog-bark-soundproof/)/[犬のケージの防音カバーは効果ある?](https://pet-kurashi.net/2026/09/11/dog-cage-soundproof-cover/))、トイレの場所([犬のトイレの場所](https://pet-kurashi.net/2026/09/09/dog-toilet-placement/))、臭い([犬の部屋の臭い対策|掃除で落ちる範囲と、工事が要る範囲](https://pet-kurashi.net/2026/09/05/dog-room-odor/))、傷([ペットのフローリングの傷|直し方4つと、選ぶ順番](https://pet-kurashi.net/2026/09/09/pet-flooring-scratch-repair/))です。行動そのものの直し方は、獣医師・専門家の領域です。
編集部の結論
「犬のしつけでやってはいけないこと」には、一次資料が具体名で答えていました。ここは推測で書く必要がありませんでした。
意外だったのは、学会の見解書が「家の側」を早い段階で名指ししていたことです。飛びつき・吠え・トイレ——この3つはすべて、家の中の、決まった場所で起きます。玄関、窓、トイレの置き場所。間取りと家具の配置は、しつけの前提条件のほうに入っていました。
編集部としては、次の順番をすすめます。
- 避けるべき手法を確認する(道具の名前で挙がっています[1])
- 困りごとが「どこで」起きているかを書き出す(玄関か、窓際か、トイレの前か)
- その場所の条件を先に変えられないか見る(導線・刺激の入口・距離)
- 行動そのものについては、かかりつけの獣医師か、報酬ベースの資格を持つ専門家に相談する
くらすけ
「どうやって直すか」の前に、「どこで起きてるか」でつね。
場所が分かれば、家の側でできることが1つは見つかるかもしれないでつ。
※本記事は住まいづくりの観点から一般的な情報を提供するものであり、個々のペットの診断・治療に代わるものではありません。歩き方や行動に気になる変化がある場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。
「うちの場合、どこを変えられるのか」は、間取りによって変わります。玄関の導線、窓から見える範囲、ケージやトイレを置ける場所——このあたりは、写真を見ながらでないと判断できない部分があります。
→ 工事が必要かどうかの切り分けから、無料で相談できます。[相談フォームはこちら](https://pet-kurashi.net/soudan/)
参考文献・出典
- American Veterinary Society of Animal Behavior(AVSAB)「Position Statement on Humane Dog Training」(2021)
– 「Common training issues such as jumping, barking, and housetraining can be managed by arranging the environment appropriately and reinforcing desirable responses.」
– 「Management strategies, including antecedent arrangement, have a vital role in dog training and should be considered in all training and behavior modification plans.」
– 「An appropriate trainer should avoid any use of training tools that involve pain (choke chains, prong collars, or electronic shock collars), intimidation (squirt bottles, shaker noise cans, compressed air cans, shouting, staring, or forceful manipulation such as “alpha rolls” or “dominance downs”), physical correction techniques (leash jerking, physical force), or flooding (“exposure”). The learner must always feel safe and have the ability to “opt out” of training sessions.」
– 「If a trainer is observed using aversive training methods or if a trainer discusses out-dated ideas such as “dominance”, “leader of the pack”, or “alpha” theories, then clients should be advised against hiring them.」
– 「Based on current scientific evidence, AVSAB recommends that only reward-based training methods are used for all dog training, including the treatment of behavior problems.」
– https://avsab.org/wp-content/uploads/2021/08/AVSAB-Humane-Dog-Training-Position-Statement-2021.pdf (確認日 2026-09-11・全4ページを取得して本文から確認)
- Vieira de Castro AC, Fuchs D, Morello GM, Pastur S, de Sousa L, Olsson IAS.「Does training method matter? Evidence for the negative impact of aversive-based methods on companion dog welfare」*PLOS ONE* 2020;15(12):e0225023(doi:10.1371/journal.pone.0225023)
– 対象: 家庭犬92頭。報酬ベースのスクール3校(Group Reward, n=42)/嫌悪的手法を使うスクール4校のうち使用割合が低い2校(Group Mixed, n=22)・高い2校(Group Aversive, n=28)
– 測定: 訓練3セッションの動画(ストレス関連行動・行動状態)、唾液サンプル6検体(自宅3=ベースライン/訓練後3)、認知バイアス課題
– 「dogs from Group Aversive displayed more stress-related behaviors, were more frequently in tense and low behavioral states and panted more during training, and exhibited higher post-training increases in cortisol levels than dogs from Group Reward」
– 「dogs from Group Aversive were more ‘pessimistic’ in the cognitive bias task than dogs from Group Reward」
– 「Dogs from Group Mixed displayed more stress-related behaviors, were more frequently in tense states and panted more during training than dogs from Group Reward」
– ⚠️ 観察の場面はトレーニングスクールでの訓練。家庭でのしつけ全般への一般化は、論文の範囲を超える(当編集部の注記)
– https://journals.plos.org/plosone/article/file?id=10.1371/journal.pone.0225023&type=printable (確認日 2026-09-11・全26ページを取得して本文から確認)
- 環境省「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」(平成14年環境省告示第37号/最終改正 令和4年環境省告示第54号)
– 共通基準より:「また、家庭動物等の訓練、しつけ等は、その種類、生態、習性及び生理を考慮した適切な方法で行うこととし、みだりに、殴打、酷使すること等は、虐待となるおそれがあることを十分認識すること。」
– 「第4 犬の飼養及び保管に関する基準」4:「犬の所有者等は、適当な時期に、飼養目的等に応じ、人の生命、身体及び財産に危害を加え、並びに人に迷惑を及ぼすことのないよう、適正な方法でしつけを行うとともに、特に所有者等の制止に従うよう訓練に努めること。」
– 同3:「犬の所有者等は、頻繁な鳴き声等の騒音又はふん尿の放置等により周辺地域の住民の日常生活に著しい支障を及ぼすことのないように努めること。」
– ⚠️ 時期について「適当な時期に」以上の記述(年齢・月齢の数値)は、全5ページを取得して確認した範囲では見当たらなかった
– https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/laws/nt_r02_21_1.pdf (確認日 2026-09-11・全5ページを取得して本文から確認)
- ラッコキーワード(月間検索数・SEO難易度・CPC・サジェスト・よくある質問)
– 「犬 しつけ」月間4,400/難易度45/CPC$0.6/競合性18(2026-09-11実測)
– サジェスト500件(698HIT)・よくある質問230件(1,264HIT)
– https://rakkokeyword.com/ (確認日 2026-09-11)

