「犬のために、一部屋増築したい。費用はいくら? 小さければ申請は要らないって本当?」
増築の費用を調べると、「10㎡以内なら確認申請は不要」という話と、「増築の坪単価は◯万円」という話がよく並んでいます。そこで気になったのが、その2つの話は、同じ規模の増築のことを言っているのかという点でした。
編集部は、建築基準法の条文、自治体の資料、国の建築着工統計(令和7年の年計)を読み、「申請が要るかどうか」と「費用の数字がどの規模の増築から出ているか」を突き合わせました。
分かったのは、国の増築の統計には、10㎡以内の増築が入っていない、ということでした。確認申請が要らなくなる「10㎡」と、統計から外れる「10㎡」が、同じ線で切られていたのです。
くらすけ
ぼくの部屋なら小さくていいでつ。でも、小さい増築の値段は、平均の数字からは分からないってことでつか?
先に、数字だけ
| 項目 | 数字 | 出典 |
|---|---|---|
| 確認申請が要らない増築 | 防火・準防火地域の外で、床面積の合計10㎡以内 | [1][3] |
| 国の着工統計の対象 | 建築基準法第15条第1項の届出がある建築物(10㎡以内は届出が要らない) | [1][5] |
| 居住専用住宅の増築(令和7年・全国) | 約20,255件/床面積 1,266,543㎡/工事費予定額 26,963,828万円 | [4] |
| 1㎡あたりの工事費予定額 | 約21.3万円(同じ表の新築は約26.8万円) | [4](割り算は当編集部) |
| 1件あたりの床面積 | 約62.5㎡ | [4](割り算は当編集部) |
測定条件: 2026年9月29日に、当編集部が e-Gov 法令検索の建築基準法、e-Stat の建築着工統計調査「建築物着工統計 第21表 用途別、工事種類別」(令和7年計・2026年1月30日公開)、福島県と神戸市の資料を直接取得して読みました。「工事費予定額」は着工の届出に書かれた予定の金額で、実際に支払った金額ではありません。
犬部屋の増築に、確認申請は要る?
建築基準法第6条第2項は、確認申請の決まりについてこう書いています。
前項の規定は、防火地域及び準防火地域外において建築物を増築し、改築し、又は移転しようとする場合で、その増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が十平方メートル以内であるときについては、適用しない。[1]
つまり、確認申請が要らないのは「防火地域・準防火地域の外」で「床面積の合計10㎡以内」の2つがそろったときだけです。
神戸市のFAQも、同じ条件を答えたうえで、こう念を押しています。
なお、防火地域及び準防火地域内では10平米以内の増築であっても確認申請が必要ですのでご注意ください。[3]
福島県の特定行政庁等の連絡会議の資料は、さらに細かい条件を挙げていました[2]。
- 「(1)敷地内に既存の建築物が無い場合」は、10㎡以下でも申請が必要
- 「床面積が10m2以内かどうかは、一度の工事で行う増築等の床面積の合計で判断する。」
- 「建築確認等が不要であっても、建築基準関係規定に適合させなければならない。」
「申請が要らない」は「何を建ててもいい」ではありません。同じ資料は、基礎や構造の安全、屋根や外壁の防火、そして「建築確認が不要な部分の床面積を含めて、容積率や建蔽率が定められた数値を超えないこと」を注意点に挙げています[2]。
くらすけ
10㎡でも、住んでいる場所によっては申請が要るし、申請が要らなくても決まりは守るんでつね。
増築の費用は、国の統計でどう出ている?
国土交通省の建築着工統計には、工事の種類(新築・増築・改築)ごとに、床面積と工事費予定額を集計した表があります[4]。令和7年(2025年)の年計で、居住専用住宅の増築の行を読みました。
| 増築 | 新築(参考) | |
|---|---|---|
| 工事件数 | 約20,255件 | 約345,077件 |
| 床面積の合計 | 1,266,543㎡ | 54,497,655㎡ |
| 工事費予定額 | 26,963,828万円 | 1,458,650,622万円 |
| 1㎡あたり | 約21.3万円 | 約26.8万円 |
| 1件あたりの床面積 | 約62.5㎡ | 約157.9㎡ |
(1㎡あたり・1件あたりは、表の数字を当編集部が割り算したもの。件数に小数が出るのは、統計が「床面積の割合を乗じて計上」しているため[4])
1件あたりの増築は、平均で約62.5㎡、工事費予定額は約1,331万円でした(当編集部の計算)。ここで引っかかったのが、62.5㎡は、犬のための一部屋にしては大きすぎるという点です。
その数字は、小さな犬部屋にも当てはまる?
理由は、統計が何を数えているかにありました。
国土交通省は、建築物着工統計調査の対象を「建築基準法第15条第1項の規定による建築物を建築しようとする旨の届出に係る建築物」と書いています[5]。そして、その第15条第1項には、ただし書きがあります。
ただし、当該建築物又は当該工事に係る部分の床面積の合計が十平方メートル以内である場合においては、この限りでない。[1]
10㎡以内の工事は届出が要らないので、統計にも入りません。確認申請が要らなくなる10㎡(第6条第2項)と、統計から外れる10㎡(第15条第1項)が、同じところで線を引いていたのです。
⚠️ ということは、「10㎡以内なら申請が要らない」話と、「増築は1㎡あたり約21万円」という話は、別の規模の工事を指していることになります(当編集部の読み方)。約21.3万円に10㎡を掛けて「約213万円」と見積もるのは、統計に入っていない規模に、統計の数字を当てはめる計算です。編集部としては、その掛け算は目安に使わないほうがよいと考えます。
今回確認した資料の範囲では、10㎡以内の増築の費用を集計した公的な数字は見つかりませんでした。
増築の前に、確かめておきたいこと
犬のための増築を考えるなら、見積もりを取る前に、次の順で確かめると話が早くなります(この順番は当編集部の判断)。
- 自宅が防火地域・準防火地域か。そうなら、10㎡以内でも確認申請が要ります[1][3]。市区町村の都市計画の窓口や地図で確かめられます
- 増やす床面積の合計は10㎡を超えるか。一度の工事の合計で判断されます[2]
- 容積率・建蔽率に、増やす分の余裕があるか。申請が要らない10㎡以内でも、面積は含めて数えます[2]
- 敷地に今の家があるか。敷地に既存の建築物が無いと、10㎡以下でも申請が必要です[2]
- 見積もりの「工事費」に何が入っているか。統計の工事費予定額は届出時の予定額でした[4]。見積書では、基礎・屋根・外壁・既存の家とのつなぎの工事がどこまで入っているかを見ます
⚠️ 増築ではなく、今ある部屋の中を犬の場所に変える方法もあります。間取りの考え方は犬の多頭飼いの部屋レイアウト、内装工事の費用はペットリフォームの費用相場まとめで扱っています。
よくある質問
Q. 犬小屋のような小さな増築なら、申請は要りませんか?
A. 防火地域・準防火地域の外で、一度の工事の床面積の合計が10㎡以内なら、確認申請は要りません[1][2]。防火・準防火地域の中では、10㎡以内でも必要です[1][3]。申請が要らなくても、建築基準関係規定には合わせる必要があります[2]。
Q. 犬部屋の増築は、1㎡いくらくらいですか?
A. 国の建築着工統計(令和7年)では、居住専用住宅の増築は1㎡あたり約21.3万円でした(工事費予定額÷床面積・当編集部の計算)[4]。ただし、この統計には10㎡以内の増築は入っていません[1][5]。小さな増築の費用は、この数字からは分かりません。
Q. 増築した部屋も、容積率に入りますか?
A. 福島県の連絡会議資料は、建築確認が不要な10㎡以内の部分も含めて、容積率や建蔽率が定められた数値を超えないこととしています[2]。
編集部の結論
- 確認申請が要らないのは「防火・準防火地域の外」かつ「10㎡以内」のときだけ[1][3]
- 申請が要らなくても、基準に合わせる義務と、容積率・建蔽率の計算は残る[2]
- 国の増築の統計は1㎡あたり約21.3万円・1件あたり約62.5㎡(令和7年・居住専用住宅)[4]
- その統計には、10㎡以内の増築が入っていない[1][5]
編集部としては、犬部屋の増築は「1㎡いくら」から考えるより先に、「自宅が防火・準防火地域か」「10㎡を超えるか」を確かめるのが近道だと考えます。この2つで、申請の要否も、参考にできる数字も変わりました。
記事だけでは判断できないこと
自宅の敷地が防火・準防火地域か、容積率・建蔽率にどれだけ余裕があるかは、敷地ごとに違います。
「犬のために部屋を足したいけれど、増築がいいのか、今の部屋の中で工夫できるのか分からない」という場合は、写真や間取り図を見ながら確認できます。
関連: 犬と暮らす家のリフォーム事例|費用の内訳と自分の家の見積もり方/ペットリフォーム業者の選び方
参考文献・出典
- 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第6条第2項・第15条第1項(e-Gov 法令検索・2026年9月29日確認)
– 第6条第2項「前項の規定は、防火地域及び準防火地域外において建築物を増築し、改築し、又は移転しようとする場合で、その増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が十平方メートル以内であるときについては、適用しない。」
– 第15条第1項 ただし書き「ただし、当該建築物又は当該工事に係る部分の床面積の合計が十平方メートル以内である場合においては、この限りでない。」
– https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
- 福島県特定行政庁等連絡会議「1-1 床面積10m2以内の増築等について 法第6条第2項」(PDF全2ページ/本文1,767字。制定 平成31年4月24日。2026年9月29日確認)
– 「床面積が10m2以内かどうかは、一度の工事で行う増築等の床面積の合計で判断す る。」(原文の改行位置のまま)
– 「建築確認等が不要であっても、建築基準関係規定に適合させなければならない。」
– https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/681689.pdf
- 神戸市FAQ「建築物を建築する場合、床面積の合計が10平米以内の増築であれば、確認申請は不要でしょうか。」(No.902・更新日時 2024/11/08。本文891字。2026年9月29日確認)
– 「なお、防火地域及び準防火地域内では10平米以内の増築であっても確認申請が必要ですのでご注意ください。」
– https://faq.city.kobe.lg.jp/faq/show/902?site_domain=default
- 国土交通省「建築着工統計調査 建築物着工統計 第21表 用途別、工事種類別/工事件数、建築物の数、床面積、工事費予定額」令和7年計(e-Stat・2026年1月30日公開。2026年9月29日取得)
– 居住専用住宅・増築: 工事件数 20,254.96673件/床面積の合計 1,266,543㎡/工事費予定額 26,963,828万円
– 居住専用住宅・新築: 工事件数 345,076.66194件/床面積の合計 54,497,655㎡/工事費予定額 1,458,650,622万円
- 国土交通省「建築動態統計調査の概要」(本文3,872字。2026年9月29日確認)
– 建築物着工統計調査の対象「建築基準法第15条第1項の規定による建築物を建築しようとする旨の届出に係る建築物」
– https://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-other-2_tk_000216.html
- ラッコキーワード「サジェストキーワード」
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