避難用に猫のケージを用意したい。でも、どのくらいの大きさなら避難所で困らないのか。編集部でも気になったので、国の災害対策ガイドラインと、自治体が避難所の運営向け・飼い主向けに出している資料3本、合わせて4本を読み比べてみました[1][2][3][4]。
結果を先に書くと、次のとおりです。
- 4本とも、ケージの大きさ・寸法は書いていませんでした。「cm」「寸法」は0件です
- 代わりに繰り返し書かれていたのは、①扉が開かず逃げない ②人とは別の場所に置かれる ③札を貼る ④覆う、の4つでした
- 避難所にケージがあるとは限りません。柏市の資料では、令和5年4月時点で全避難所に配備した備蓄品25品目に、ケージは入っていませんでした[3]
くらすけ
大きさの正解が書いてないなら、何を基準に選べばいいの?
先に、数字だけ
| 資料 | 発行 | 本文の字数 | 「ケージ」 | 大きさ・寸法の記載 |
|---|---|---|---|---|
| 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」[1] | 平成30年2月 | 96,867字 | 35件 | 0件 |
| 埼玉県「ペット同行避難ガイドライン(避難所運営編)」[2] | 令和2年6月 | 15,656字 | 11件 | 0件 |
| 柏市「ペット避難受入れに関するガイドライン」[3] | 令和5年9月1日 | 13,229字 | 16件 | 0件 |
| 香川県「ペット受け入れのための避難所等運営ガイドライン」[4] | 平成26年12月 | 15,359字 | 12件 | 0件 |
数え方は、PDFから取り出した本文の全角・半角をそろえ、空白を取り除いてから数えました(編集部の集計)。「大きさ」は4本で計4件、「サイズ」は計2件ありましたが、前後を読むと、動物の体格・施設や被害の規模・物資一覧の欄名を指すもので、ケージの大きさを書いたものはありませんでした。
猫は「キャリーバッグかケージ」に入れて避難する
まず国の資料です。環境省のガイドラインは、同行避難するときの準備として、猫についてこう書いています。
キャリーバッグやケージに入れる。[1]
キャリーバッグなどの扉が開いて猫が逸走しないようにガムテープなどで固定するとよい。[1]
持ち出す優先順位の表でも、いちばん上の「優先順位1」にキャリーバッグやケージが入っていて、括弧書きで次のように添えられています。
キャリーバッグやケージ (猫や小動物には避難時に欠かせないアイテム)[1]
ここで書かれているのは「入れること」と「扉が開かないこと」で、大きさの指定はありません。
くらすけ
大きさより先に、「扉が開かない」なんだね。
条件1|扉が開かず、逃げないこと
環境省の資料は、避難用品の例の中で、猫のキャリーバッグについてこう注意しています。
経年劣化によりプラスチック製の組み立て式キャリーバッグが分解したり、扉が開いたりしないように、ガムテープなどで周囲を固定するとよい[1]
自治体の側は、もっとはっきり書いています。柏市の資料は、避難所で受け入れられない場合の1つとして、次を挙げていました。
リードや飼育ゲージを持参しておらず放し飼いの状態でしか飼育できない動物[3]
(原文は「ゲージ」と表記)
同じ資料の飼育ルールの例は、「ペットは必ずケージ等に入れるか、リード等で所定の場所に繋ぎ止めてください。」[3]としています。犬はリードでつなぐ選択肢がありますが、猫をリードでつないで過ごさせるのは現実的ではない家庭が多いはずです。猫にとっては、ケージかキャリーが事実上の前提になる、と編集部は読みました(この読み取りは編集部のものです)。
条件2|人とは別の場所に置かれること
「同行避難」は、避難所で一緒に寝起きすることではありません。3本の資料がそれぞれ書いています。
同行避難とは、避難行動を示す言葉であり、指定避難所でペットを人間と同室で飼養管理することを意味するものではない。[1]
原則として、 住民の居室には、 ペットを持ち込むことは出来ません。[4]
柏市は、屋内でペットを受け入れる場合についても、次のように注記しています。
(飼い主とペットが同室で避難生活を送ることを意味するものではありません。)[3]
つまり、猫はケージの中で、飼い主から離れた場所で過ごす時間があるということです。柏市の資料には、受け入れ場所として音楽室・機械室などの施設名が並んでいました[3]。
ここから編集部が考えたのは、ケージの中にトイレを置けるかどうかです。環境省の資料は、持ち出す優先順位1に「トイレ用品(猫の場合は使い慣れた猫砂、または使用済猫砂の一部)」を挙げています[1]。人と別の場所で過ごすなら、ケージの中で用を足せたほうが、飼い主がそばにいない時間も困りにくいはずです。ただし、どの大きさならトイレが入るかは、4本の資料のどれにも書かれていません(この見立ては編集部のものです)。
条件3|札を貼れること
3本の自治体資料は、どれもケージに名札を付ける運用を書いていました。
ケージに記入した「ペット避難カード」を張り、他のペットと混同しないようにしましょう。[3]
※ペットケージの見やすい場所に貼り付けてください。[4]
埼玉県の資料も、受付で「ケージ用の札を渡してケージなどに装着してもらうと管理する上で役立ちます」としています[2]。
全面が細い格子だけのケージだと、紙の札を貼る場所に困ることがあります。扉の上の枠や、天面の平らな部分など、ガムテープで札を留められる面があるかは、買う前に見ておけることです(この見立ては編集部のものです)。環境省の資料も、持ち出す品の優先順位3に「ガムテープやマジック (ケージの補修、 段ボールを用いたハウス作り、 動物情報の掲示、など多用途に使用可能)」を入れています[1]。
条件4|覆えること
柏市の飼育ルールの例には、次の一文がありました。
鳴き声等対策として、可能であればペット同士の目線が合わないようにケージを設置する又は、ケージを毛布等で覆いましょう。[3]
埼玉県の資料に載った、避難所に置いておく物資の一覧(NPO法人アナイスの資料提供)にも、「ケージカバー用」「ケージカバー留め」という用途が書かれています[2]。
覆う前提なら、上から布をかけても扉が開け閉めできるか、通気が確保できるかが気になるところです。かける布の素材と、かけて変わること・変わらないことは、猫のケージカバー|代用できるものと、かける前の確認で扱っています。
くらすけ
逃げない、札が貼れる、覆える。大きさより、こっちを先に見ればいいんだね。
避難所にケージがあるとは限らない
柏市の資料には、避難所の備蓄品の一覧が載っていました。
令和5年4月現在,以下の備蓄品をクリアケースに収容し,ペット避難用として 全避難所に配備しています。[3]
続く一覧は、ビニールシート・遮光ネット・ガムテープ・紙深皿など25品目。ケージは入っていません(編集部が一覧を数えました)。ケージは、その上の行に別に書かれていました。
令和5年度に配備予定の備蓄品 ケージ(大・中・小),ケージカバー 等 ※変更する可能性があります。[3]
この資料の時点では「予定」で、その後に配備されたかどうかは、この資料からは分かりません。同じ資料は、備蓄しておくとよいペット用品の3番目に「キャリーケース又はケージ」を挙げ、飼い主が用意するものとしています[3]。
埼玉県の資料には、令和元年の台風第19号のときに県内の自治体へ寄せられた相談・苦情を、県が照会して集計した表があり、その中に「避難所ごとにケージ等を備蓄してほしい」という項目がありました(挙げた自治体は1)[2]。避難所にケージがあることを前提にしないほうがよさそうです。
国の側では、東日本大震災のときに「被災地の避難所に動物用ケージ 1895 個 ・ テント 56 張りなどを提供し、 避難所でのペットの飼養を支援した。」と環境省の資料に記録されています[1]。届いたのは災害が起きた後の話で、避難した当日に手元にあるのは、自分で持ってきたものです(この読み取りは編集部のものです)。
実際に避難した人は、ケージを持ってきていた
埼玉県の資料には、坂戸市の事例が載っていました[2]。
- ペットの受け入れがあった避難所: 18か所
- 犬 48・猫 18・兎 1、合計 67
- 「飼い主はケージ、ペットフードなどを持参した方が多く、傍で静かにしているペットが多かった。」
ここまでは安心できる話ですが、同じページで市自身がこう書いています。
水害はリードタイムがあるが、地震のように突発的なものでも同じように上手くいくのか…??[2]
準備ができていたのは、避難までに時間がある災害だったから、かもしれないという自己評価です。地震のように時間がない場合は、組み立てる・探す時間がかからないことが効いてきます。
では、どう選ぶか(順番)
4本の資料から言えることを、選ぶ順番にまとめます(この順番は編集部の判断です)。
| 順 | 見ること | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 扉が確実に閉まり、テープで固定できるか | 猫は「扉が開いて猫が逸走しないようにガムテープなどで固定するとよい」[1] |
| 2 | 人と離れて過ごす前提で、中にトイレを置けるか | 同室ではない[1][3][4]/猫砂は優先順位1[1] |
| 3 | 札を貼れる平らな面があるか | 自治体3本とも札の運用を書いている[2][3][4] |
| 4 | 上から覆っても扉と通気が使えるか | 「ケージを毛布等で覆いましょう」[3] |
| 5 | すぐ持ち出せるか(畳めるか・重さ) | 地震で同じようにいくかは分からない、という自治体の自己評価[2] |
大きさは、この5つを満たしたうえで、家の中に置けて、持って運べる範囲で決めることになります。畳んだときの厚みと、何kgまでの猫が入るかを製品ごとに数字で比べた記事は、猫ケージの折りたたみ|畳んだ厚みと体重の見方です。
よくある質問
Q. キャリーバッグがあれば、ケージは要りませんか?
A. 環境省の資料は猫について「キャリーバッグやケージ」と並べて書いており、どちらか一方を指定してはいません[1]。ただ、人と別の場所で何日か過ごす可能性があるなら、中にトイレを置けるかは考えておきたいところです。
Q. 避難所でケージを借りられますか?
A. 自治体によります。柏市の資料では、令和5年4月時点の備蓄品にケージは無く、令和5年度に配備予定と書かれていました[3]。お住まいの自治体のページで確認してください。
Q. 何日分の備えが要りますか?
A. 備蓄の日数と、家の中のどこに置いておくかはペットの防災|備蓄は何日分と、置き場所の分け方で扱っています。
Q. 猫がケージに入りたがりません。
A. 環境省の資料は、日頃の備えとして猫も「ケージやキャリーバッグに入ることを嫌がらないように、日頃から慣らしておく。」としています[1]。家の中で見直す置き場所と中身は猫がケージに入らない|嫌がる前に見直す置き場所と中身で扱っています。
編集部の結論
「避難用の猫のケージは何cmあればいいか」に、国と自治体の資料4本は答えていませんでした。書かれていたのは、次の4つです。
- 扉が開かず、逃げないこと[1][3]
- 人とは別の場所に置かれること[1][3][4]
- 札を貼ること[2][3][4]
- 覆うこと[2][3]
そして、避難所にケージがあるとは限りません[3]。
今回確認したのは4本の公的資料で、編集部が実際に避難所でケージを使ったわけではありません。避難所の運営は自治体ごと・避難所ごとに違います。大きさで迷ったら、まず上の4つを満たすかを見て、そのうえで家に置けて運べる大きさを選ぶのが、資料から言える範囲の答えです。
家ごとに違う部分は、相談できます
避難用のケージを家のどこに置いておけば、玄関まですぐ持ち出せるか。畳んで置くのか、普段から組み立てたまま使うのか。これは間取りと、猫がふだん過ごしている場所によって変わります。
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参考文献・出典
- 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」(平成30年2月・全176ページ)。猫の同行避難の準備(PDF p.49)、避難用品の例(PDF p.41)、持ち出す優先順位(PDF p.42)、日頃の備え(PDF p.38)、東日本大震災での国の支援(PDF p.16) https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h3002/0-full.pdf (確認日: 2026年10月6日)
- 埼玉県保健医療部生活衛生課「ペット同行避難 ガイドライン(避難所運営編)ver.1」(令和2年6月発行・全27ページ)。坂戸市の参考事例(PDF p.22)、スターターキット内物資の一例(PDF p.21・NPO法人アナイス資料提供)、相談苦情の集計(PDF p.15) https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/178227/guideline1.pdf (確認日: 2026年10月6日)
- 柏市動物愛護ふれあいセンター・柏市防災安全課「ペット避難受入れに関するガイドライン ~災害に備えた心構え~」(令和5年9月1日発行・東葛地域獣医師会監修・全20ページ)。受け入れできない場合(PDF p.4)、ペット避難に係る備蓄品一覧(PDF p.18)、避難所におけるペット飼育のルール(例) https://www.city.kashiwa.lg.jp/documents/35786/press-guideline.pdf (確認日: 2026年10月6日)
- 香川県健康福祉部生活衛生課「ペット受け入れのための避難所等運営ガイドライン」(平成26年12月・全26ページ) https://www.pref.kagawa.lg.jp/documents/6082/sty1la181022153407_f02_1.pdf (確認日: 2026年10月6日)

