爪とぎを買って置いたのに、猫が見向きもしない。次の1つを選ぶとき、形を変えるのか、素材を変えるのか、においを足すのか——この3つを、同じ研究者が家庭の猫36頭で順に比べた実験がありました[1]。
結果を先に書くと、次のとおりです。
- 形: 立てた段ボールが寝かせたS字より好まれた。ただし有意だったのは去勢オスだけで、避妊メスでは差が出ていません[1]
- 素材: 麻の縄(ロープ)と段ボールが、ソファの生地より使われました[1]
- におい: キャットニップとマタタビを足した爪とぎは、合成フェロモンを足したものより使われました[1]
- においが効かない猫もいる: 別の研究では、キャットニップに反応しない猫が3頭に1頭いて、そのうち7割はマタタビに反応しました[2]
くらすけ
「しない」にも、形が合っていないのか、素材が合っていないのか、いろいろあるんだね。
先に、数字だけ
| 比べたもの | 家・猫の数 | 結果 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 立てた段ボール/寝かせたS字の段ボール | 7軒・18頭 | 好みの指数は立てた型が高い。去勢オス6頭では有意、避妊メス12頭では有意でない | [1] |
| 麻の縄/段ボール/ソファの生地/カーペット | 14軒・25頭 | 縄と段ボールが、ソファの生地より多く使われた | [1] |
| キャットニップ/マタタビ/合成フェロモン | 7軒・20頭 | キャットニップとマタタビが、合成フェロモンより使われた | [1] |
| キャットニップに反応しない猫 | 100頭 | 3頭に1頭。そのうち31頭中22頭(71%)がマタタビに反応 | [2] |
そもそも、どんな実験だったのか
米テキサス工科大学の Zhang と McGlone が、2020年に *Applied Animal Behaviour Science* に発表した論文です。論文はこう書いています。
Thirty-six adult cats were the subjects in three experiments to evaluate adult cat in-home preferences for scratchers, scratching materials, and the use of scratchers with added olfactory stimuli.[1]
(成猫36頭を対象に、爪とぎの形、素材、においを足した爪とぎの使われ方について、家庭での好みを3つの実験で調べた/訳は編集部)
実験室ではなく、飼い主の家に爪とぎを並べて置き、1週間ビデオで撮って数えています[1]。猫が普段暮らしている部屋での結果なので、家で爪とぎを選ぶ人にとっては読みやすい実験です。
一方で、集めた家庭には偏りがあります。
The cats enrolled in the study were recruited from students, staff, and faculty members in the Department of Animal and Food Sciences at Texas Tech University.[1]
(対象の猫は、同大学の動物・食品科学科の学生・職員・教員から募集した/訳は編集部)
1つの実験あたりの家は7〜14軒です[1]。「すべての猫がこうなる」と読める規模ではありません。この記事では、次の1つを選ぶときの手がかりとして読みます。なお著者2名は利益相反が無いと明記しています[1]。
形|立てた型が好まれたのは、去勢オスだけでした
最初の実験は、床に寝かせるS字の段ボールと、立てた段ボールを同じ部屋に並べたものです。
まず、研いだ回数と時間そのものは差が出ていません。
When the laying S-shaped cardboard and the standing cardboard scratcher were compared, scratching and scratcher interaction were not statistically different (Table 2; n = 7 houses; P > 0.10) based on the Wilcoxon signed rank test.[1]
(寝かせたS字と立てた段ボールを比べると、研いだ量と爪とぎへの関わりには統計的な差が無かった/訳は編集部)
差が出たのは、2つのうちどちらをより多く使ったかの割合(好みの指数)でした。立てた型のほうが高かったのですが、論文は続けてこう書いています。
This preference for the standing cardboard was significant with neutered male (NM) cats (n = 6, P ≤ 0.05) but not with spayed females (SF, n = 12, P > 0.10).[1]
(立てた段ボールへの好みは、去勢オスでは有意だったが、避妊メスでは有意ではなかった/訳は編集部)
「猫は立てた爪とぎが好き」とひとまとめにすると、この実験の半分以上の猫(メス12頭)を取りこぼします。
子猫の実験では、逆の型が好まれていた
同じ論文の序論に、もう1つ気になる一文があります。
A recent study in kittens showed that the laying S-shaped cardboard was preferred over the other scratchers tested (Zhang et al., 2018).[1]
(子猫を対象にした最近の研究では、寝かせたS字の段ボールが、試したほかの爪とぎより好まれた/訳は編集部)
子猫では寝かせたS字、成猫の去勢オスでは立てた型。2つの実験は条件が違うので単純には比べられませんが、子猫のころ使っていた爪とぎが、大人になっても一番とは限らない、とは言えそうです(この読み取りは編集部のものです)。
くらすけ
子猫のときに使ってた爪とぎを、そのまま買い直してたかも……。
編集部の見立て: 寝かせる型を使わなくなったオス猫なら、立てる型を先に試す。メス猫の場合、この実験からは形でどちらを選ぶべきかは言えません。
立てる型を選ぶときの高さ(約91cm以上)と倒れにくさは、猫の爪研ぎはダンボールと麻どっち?高さと置き方で選ぶで扱っています。
素材|縄と段ボールが、ソファの生地より使われた
2つ目の実験は、同じ形の爪とぎに、麻の縄(ロープ)・段ボール・ソファの生地・カーペットの4種類を巻いて並べたものです(14軒・25頭)[1]。
Scratchers covered with rope and cardboard had higher ( P ≤ 0.05) behavioral interactions than scratchers with sofa fabric.[1]
(縄と段ボールを巻いた爪とぎは、ソファの生地を巻いたものより、猫が多く関わった/訳は編集部)
結論の節では、カーペットも含めてこう書いています。
Cats also spent more time with the scratching substrates of cardboard and rope than with carpet and sofa fabric.[1]
(猫は、カーペットやソファの生地より、段ボールと縄で長く過ごした/訳は編集部)
ここで気をつけたいのは、要旨で統計の値つきで書かれている比較は「ソファの生地と比べて」だけだという点です。カーペットとの比較は結論の節の文章で、要旨には数値が載っていません[1]。
当メディアが以前読んだ飼い主4,331件の調査では、カーペットは好まれた素材の上位に入っていました(ダンボールと麻どっち?の記事)。飼い主へのアンケートと、家で並べて置く実験とで、カーペットの位置が違うことになります。どちらが正しいというより、調べ方が違うと順位も動くと読むのが安全です(この読み取りは編集部のものです)。
編集部の見立て: 今の爪とぎがカーペットや布張りで使われていないなら、縄か段ボールに替えるのが、この実験からいちばん素直に言えることです。
におい|マタタビとキャットニップは、合成フェロモンより使われた
3つ目の実験は、立てた段ボールの爪とぎに、においを入れた靴下を掛けたものです。
Each treatment was delivered in a sock hung on a standing cardboard scratcher and compared to a control scratcher with an untreated sock for two days.[1]
(それぞれの処理は、立てた段ボールの爪とぎに掛けた靴下に入れ、何も入れない靴下を掛けた爪とぎと2日間比べた/訳は編集部)
試したのは3つです。キャットニップ(西洋のハーブ)、マタタビ、合成フェロモン(猫の肉球から出るにおいを人工的に作ったもの)[1]。
論文の要点はこう書かれています。
Some scratcher additives were effective at increasing use of scratchers (Silver Vine and Catnip) while another one (Feline pheromone) was not as effective in increasing scratcher use.[1]
(いくつかの添加物は爪とぎの利用を増やしたが(マタタビとキャットニップ)、もう1つ(猫のフェロモン)はそれほど効果が無かった/訳は編集部)
キャットニップとマタタビで、書き方が違う
要旨を読み比べると、2つの書き方が少し違います。
- キャットニップ: 「Catnip increased the scratching duration (n = 7 houses, W = 14, P = 0.02)」[1]=研いだ時間が増えた
- マタタビ: 「Silver vine also increased the duration (n = 7 houses, W = 14, P = 0.02) and frequency (n = 7 houses, W = 14, P = 0.02) of the interactions.」[1]=爪とぎに関わった時間と回数が増えた
何も入れない靴下と比べて「研いだ時間が増えた」と要旨に書かれているのは、キャットニップだけです。関わる(においをかぐ、こすりつける、そばにいる)のと、研ぐのは別の動作です。
ただし、合成フェロモンと比べた場合は、2つとも研ぐ側の指標でも上回っています。
Both CN- and SV-treated scratchers had higher (n = 7 houses, 20 cats, P ≤ 0.05) PIs of scratching and interaction related measurements compared to the FIS-treated scratcher.[1]
(キャットニップとマタタビを足した爪とぎは、どちらも、研ぐことと関わることの好みの指数が、合成フェロモンを足した爪とぎより高かった/訳は編集部)
全文は有料で、編集部は要旨・序論・結論の公開部分までしか読んでいません。
また、この実験は2日間・7軒です[1]。においで使うようになっても、それが何週間続くかは、この論文からは分かりません。
においが効かない猫は、3頭に1頭いる
においを足しても反応しない猫がいることは、別の論文が数えています。米国とドイツの研究者が、猫100頭にキャットニップ・マタタビなど4種類の植物を試した研究です(*BMC Veterinary Research* 2017年・利益相反なしと明記)[2]。
one out of every three cats did not respond to catnip. Almost 80% of the domestic cats responded to silver vine[2]
(3頭に1頭は、キャットニップに反応しなかった。マタタビには家猫のほぼ80%が反応した/訳は編集部)
ここでいう silver vine の学名は *Actinidia polygama*[2]、つまり日本のマタタビです。
さらに、キャットニップに反応しなかった猫だけを取り出した数字があります。
Of the 31 cats not responding to catnip, 22 (71%) responded to silver vine[2]
(キャットニップに反応しなかった31頭のうち、22頭(71%)がマタタビに反応した/訳は編集部)
同じ論文の要旨では、この割合を「Of the cats that did not respond to catnip, almost 75% did respond to silver vine」[2]と書いています。本文の数字は31頭中22頭=71%です。
そして、どれにも反応しない猫もいます。
Ninety-four of the 100 cats (94%) responded to at least one of the four stimuli, whereas six cats (6%) did not respond to any of the materials.[2]
(100頭のうち94頭(94%)は4種類の少なくとも1つに反応し、6頭(6%)はどれにも反応しなかった/訳は編集部)
編集部の見立て: キャットニップ付きの爪とぎで反応が無かったなら、次はマタタビ。それでも反応しない猫はいるので、においだけで解決しようとせず、形と素材を先に見直すほうが確実です。
変える順番|素材 → 形 → におい
ここまでを、次の1つを選ぶ順番にまとめます(この順番は編集部の判断です)。
| 順 | 見直すもの | 変えるなら | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 1 | 素材 | カーペット・布張りなら、縄か段ボールへ | 縄と段ボールがソファの生地より使われた[1] |
| 2 | 形 | 寝かせる型を使わない去勢オスなら、立てる型へ | 立てた型の好みは去勢オスで有意[1] |
| 3 | におい | キャットニップで反応が無ければマタタビへ | キャットニップ非反応31頭中22頭がマタタビに反応[2] |
素材を1番にしたのは、3つの実験の中で家と猫の数がいちばん多く(14軒・25頭)、要旨に「オスだけ」のような条件が付いていなかったのが素材だったからです。形は有意だったのが去勢オスだけ、においは2日間の実験でした[1]。
そして、どれを変えても「置く場所」が合っていなければ使われません。猫がよく過ごす場所・研ぎたがる家具のそばに置く話は、猫の爪研ぎはおしゃれより置き場所|使われる条件で扱っています。
よくある質問
Q. 爪とぎをまったくしない猫は、放っておいて大丈夫ですか?
A. この記事で扱った論文は、爪とぎの使われ方を比べたもので、爪とぎをしないことが体にどう影響するかは扱っていません。爪の伸びすぎや、歩き方に気になる変化があれば、かかりつけの獣医師にご相談ください。爪の削れ方については猫の爪研ぎヤスリ|爪切り不要は本当?で扱っています。
Q. 爪とぎではなく、壁や家具で研ぎます。
A. 猫が爪を研ぐ理由と、家の中で見直す場所は猫の爪とぎはなぜ?理由の見分け方と家の見直し方で扱っています。
Q. 丸い爪とぎ・手作りの爪とぎはどうですか?
A. 丸型は猫の爪とぎ丸型|直径の見方と交換用が入るか、手作りは猫の爪とぎ手作り|100均の麻紐で届く高さと種類で扱っています。
Q. マタタビは与えても大丈夫ですか?
A. 与える量や体への影響は、この記事では扱っていません。心配な場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。
編集部の結論
「爪とぎをしない猫」に次の1つを選ぶ手がかりとして、家で並べて置いた実験を読むと、いちばんはっきりしていたのは素材でした。
- 縄と段ボールは、ソファの生地より使われました[1]
- 立てた型の好みは、去勢オスでは有意、避妊メスでは有意でありませんでした[1]
- 子猫の実験では、寝かせたS字が好まれていました[1]
- キャットニップに反応しない猫は3頭に1頭。そのうち31頭中22頭はマタタビに反応しました[2]
今回確認したのは論文の公開部分だけで、編集部が猫に爪とぎを並べて試したわけではありません。実験の家は7〜14軒で、1つの大学の関係者の猫です[1]。「うちの子」がこの結果どおりに動くとは限らないので、1つずつ変えて、何が効いたかを見るのがいちばん確実です。
自分の家の場合はどうなるか
立てる爪とぎを倒れないように置けるか、壁に固定できる場所があるかは、家ごとに違います。壁に固定するなら下地の位置も関わります。
工事が必要かどうかの切り分けだけでも、無料の相談窓口でご相談いただけます。見積は施工会社が現地を見て作るものなので、この場では出せません。
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※本記事は住まいづくりの観点から一般的な情報を提供するものであり、個々のペットの診断・治療に代わるものではありません。歩き方や行動に気になる変化がある場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。
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参考文献・出典
- Zhang L, McGlone JJ.「Scratcher preferences of adult in-home cats and effects of olfactory supplements on cat scratching」*Applied Animal Behaviour Science* 2020;227:104997.(ScienceDirect の論文ページ。要旨・ハイライト・序論・各節の冒頭・結論・利益相反の記載が公開部分。全文は有料で未読) https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0168159120300800 (確認日: 2026年9月30日)
- Bol S, Caspers J, Buckingham L, et al.「Responsiveness of cats (Felidae) to silver vine (Actinidia polygama), Tatarian honeysuckle (Lonicera tatarica), valerian (Valeriana officinalis) and catnip (Nepeta cataria)」*BMC Veterinary Research* 2017;13:70.(オープンアクセス・全文) https://bmcvetres.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12917-017-0987-6 (確認日: 2026年9月30日)
- ラッコキーワード(サジェスト13件・編集部実測・2026年9月28日)

