猫のケージのストレス|隠れ場所で変わること、変わらないこと

猫のケージのストレス|隠れ場所で変わること、変わらないこと
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猫をケージに入れると、ストレスになるのではないか。「猫 ケージ ストレス」は月に140回検索されています[5]。

編集部が調べてみると、ケージの中の猫のストレスを実際に測った研究がありました。オランダのユトレヒト大学のグループが、保護施設に来たばかりの猫を、ケージの中に段ボールの「隠れ箱」を置く群と置かない群に分けて比べたものです。2014年と2019年の2回行われています[1][2]。

分かったのは、隠れ箱があると猫は早く落ち着く。ただし、落ち着くのが早くなるだけで、体重が減ることは防げなかった、ということでした。

くらすけ

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箱ひとつで、何が変わって、何が変わらないのでつか?

目次

先に、数字だけ

何の数字か値出典
2014年の試験の猫の数19匹(箱あり10・なし9)[1]
2019年の試験の猫の数23匹(箱あり12・なし11・1〜10歳)[2]
🔴 スコアが落ち着いた日(2019年)箱あり 2日目/なし 9日目[2]
🔴 12日間で体重の5%以上を失った猫23匹中15匹[2]
12日間の体重の減り方(平均)箱なし 7.7%/箱あり 6.3%(差は有意でない)[2]
隠れ箱の大きさ44×31×26cm・出入口2つ(幅16×高さ20cm)[2]
試験のケージの広さ(床+棚)1.01㎡/0.80㎡[2]

⚠️ どちらの試験も、対象は保護施設の検疫ケージに入った成猫です。家で飼っている猫に同じ結果が出るとは限りません。

「ストレス」は、どうやって測ったのか

2つの試験は、猫の血液や尿ではなく、行動を見て点数を付ける方法を使っています。Kessler と Turner が作った「Cat-Stress-Score(CSS)」です[1][2]。2019年の論文はこれを「non-invasive Cat-Stress-Score (CSS)」、つまり猫に触れずに測れる方法と書いています[2]。

2019年の試験は、それに加えて体重も量りました。論文の冒頭にはこう書かれています[2]。

Providing opportunities to hide can significantly reduce behavioural stress in cats, but confirmation with physical parameters is needed.

(隠れる機会を与えると猫の行動上のストレスが大きく下がることはあるが、体の指標での確認が必要だ)

行動のスコアだけでなく、体の変化でも確かめたい——というのが、2回目の試験の目的でした。

隠れ箱で変わったこと:落ち着くまでの日数

2014年:3〜4日目に差が出て、14日目には同じになった

最初の試験は19匹で行われました[1]。結果は次のとおりです。

a significant difference was found between groups in the mean CSS on observation day 3 and 4, whereby the hiding box group had a lower mean CSS (p < 0.01)

3日目と4日目に、隠れ箱のある群のほうがスコアが低くなりました。ただし、続きにはこうあります[1]。

the mean CSS for both groups was equal at day 14, but this level of recovery was already reached around day 3 in the hiding box group.

14日目には、両群のスコアは同じでした。隠れ箱のある群は、その水準に3日目ごろには達していた、ということです。

2019年:箱ありは2日目、なしは9日目

2回目の試験は23匹で、ランダムに2群に分けて行われました[2]。

Cats from the hiding box group reached a steady state sooner (on Day 2) than cats from the control group (on Day 9).

箱のある群は2日目に、ない群は9日目に、スコアが落ち着いた状態になりました。差は7日です。1日目の時点では両群の差は有意ではなく、それ以降はすべての日で箱のある群のほうが低かった、とも書かれています[2]。

編集部として意外だったのは、2つの試験のどちらでも、隠れ箱の効果は「最後に落ち着くかどうか」ではなく「どれだけ早く落ち着くか」に出ていたことです。箱がなくても、猫はいずれ落ち着いていました。

隠れ箱で変わらなかったこと:体重

2019年の試験で、体重は0日目・7日目・12日目に量られました[2]。その結果がこれです。

nearly all cats in both groups lost significant body weight during the first two weeks

ほぼ全頭が、最初の2週間で体重を大きく減らしていました。1匹を除くすべての猫が体重を減らし、23匹中15匹が12日間で体重の5%以上を失っています[2]。

平均では、箱のない群が7.7%、箱のある群が6.3%の減少でしたが、この差は有意ではありませんでした[2]。論文の結論はこうです。

Providing them with hiding enrichment during that period, does not prevent weight loss.

(その期間に隠れる場所を与えても、体重の減少は防げない)

行動は早く落ち着いても、体重は同じように減っていた。「隠れ場所を置けば、ケージのストレスは解決する」とは、この試験からは言えません。

なお、この試験では譲渡率にも差がありませんでした(箱なし 11匹中9匹、箱あり 12匹中12匹。p=0.55)[2]。

研究のケージと、家のケージは同じではない

ここで、試験の条件をもう一度見ておきます。

試験のケージは、床と棚を合わせて1.01㎡と0.80㎡でした(84×95×80cm、または69×91×87cm)[2]。そこに入れた隠れ箱は44×31×26cmの段ボール箱で、出入口が2つあります[2]。

家庭用の猫ケージは、横に広い代わりに縦に積む形が多くあります。たとえばアイリスオーヤマのキャットランドケージ3段(PCLC-703)は、内寸が「幅615×奥行475mm」です[4]。ここに試験と同じ大きさの箱を置くと、1段の床の約47%を占めます(44×31=1,364㎠、61.5×47.5=2,921㎠。当編集部の計算)。

では、ケージを広くすればよいのか。2019年の論文は、先行研究を引いてこう書いています[2]。

Doubling the cage sizes did not influence the pattern of feline responses, suggesting that physical space solely may be of less importance to cats, in contrast to managed and enriched environments that did significantly affect the cats.

(ケージを倍の広さにしても猫の反応のパターンは変わらず、広さだけより、管理や環境の工夫のほうが猫に影響した)

広さそのものより、中に何をどう置くかのほうが効いている可能性がある、ということです。ただしこれも、施設のケージでの話です。

指針は、ケージの中の配置をどう書いているか

米国猫医療協会(AAFP)と国際猫医学会(ISFM)の「環境ニーズ指針」(2013年)には、ケージの中について書かれた項があります[3]。動物病院のケージについての記述ですが、中身は配置の話です。

Veterinary hospital cages should be large enough to allow intra-cage resources to be spread out, including resting and hiding areas separate from food and water. Toileting areas should always be located away from food and water dishes.

(ケージは、休む場所・隠れる場所を食器や水から離して配置できる広さが必要で、トイレは常に食器と水から離す)

ほかにも、次のように書かれています[3]。

  • 猫が見えなくなりすぎないよう、扉の一部をタオルで覆う(「providing a towel to cover a portion of a cage door」)
  • 他の猫のケージと向かい合わせにしない(「Ideally, cages should not face other cats’ cages.」)
  • 隠れ場所には、横に倒した段ボール箱が使える(「A cardboard box placed on its side, to allow easy access and a roof, provides a safe place from a perceived threat.」)

2つの試験で使われたのも、段ボール箱でした。指針と試験が、同じ道具を指しています。

家のケージで、何ができるか

ここからは、上の資料をもとにした編集部の考えです。家で飼う猫に同じ効果があると確かめられたわけではありません。

1. 隠れられる場所を、ケージの中か、すぐ横に1つ

試験の箱は44×31×26cmでした[2]。家のケージの1段にそのまま入らないなら、段を分けるか、ケージの外に置いてつなげる方法もあります。1段の広さと、何が置けるかは猫のケージのレイアウト|1段に何が置けるかは奥行で決まるで整理しています。

2. トイレと食器・水を離す

指針はここを「always」と書いています[3]。トイレ付きのケージを選ぶときは、猫ケージのトイレ付きのデメリット|買う前に測る3か所も参考にしてください。

3. 前面を少しだけ覆う、ほかの猫と向かい合わせにしない

多頭飼いでケージを2台置くなら、向きを変えるだけでもできます[3]。布のかけ方は猫のケージカバー|代用できるものと、かける前の確認に、置き場所は猫のケージの置き場所|高さで決まる窓際・リビングの選び方にまとめています。

くらすけ

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隠れる場所と、トイレとごはんの距離。まずはこの2つでつね。

そして、体重は量っておく。試験では、隠れ箱があっても体重は減っていました[2]。環境が変わった直後は、行動が落ち着いて見えても、体重の変化は別に見ておくほうがよいと編集部は考えます。気になる減り方があれば、かかりつけの獣医師に相談してください。

よくある質問

Q. ケージに入れると、猫はストレスを感じますか?

A. 今回読んだ試験は、保護施設に来たばかりの猫を対象にしたもので、「ケージそのもの」と「ケージがない状態」を比べてはいません[1][2]。比べたのは「ケージの中に隠れ箱があるか、ないか」です。家庭でケージに入れること自体の影響は、この2つの試験からは分かりません。

Q. 隠れ箱は、どれくらいの大きさがいいですか?

A. 試験で使われたのは44×31×26cmの段ボール箱で、出入口が2つありました[2]。これが最適な大きさだと示された数字ではありません。試験で使った大きさ、として参考にしてください。

Q. 何日くらいで慣れますか?

A. 保護施設の試験では、スコアが落ち着いた状態になったのは隠れ箱ありで2日目、なしで9日目でした[2]。家庭の猫に同じ日数が当てはまるとは限りません。ケージを外す目安の考え方は猫のケージはいつまで?外す目安と部屋の準備にまとめています。

Q. ケージは広いほどいいですか?

A. 2019年の論文は、先行研究を引いて「ケージを倍の広さにしても反応のパターンは変わらなかった」と書いています[2]。広さだけで決まるわけではなさそうですが、隠れ場所とトイレ・食器を離して置ける広さは要る、というのが指針の書き方です[3]。

編集部の結論

「ケージに入れるとストレスになるか」という問いに、今回の資料は直接は答えていません。答えていたのは、「ケージの中に隠れる場所があると、何が変わるか」です。

  • 変わったこと: 落ち着くまでの日数。2019年の試験では2日目と9日目で、7日の差[2]
  • 変わらなかったこと: 体重の減り方。ほぼ全頭が減り、隠れ箱の有無で有意な差はなかった[2]
  • 最終的には: 2014年の試験では、14日目に両群のスコアは同じになった[1]

隠れ場所は「早く落ち着くための道具」であって、「ケージのストレスをなくす道具」ではない——というのが、2つの試験を並べた編集部の読みです。だからこそ、隠れ場所を置いたうえで、トイレと食器を離し、体重の変化を別に見ておく。この3つを組み合わせるのが、今回の資料から言える範囲だと考えます。

くらすけ

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落ち着いて見えても、体重計には乗るでつ。

ケージを置く場所や、隠れ場所をどこに確保するかは、部屋の広さや家具の配置で変わります。間取りの写真を見ながらの確認もできますので、迷ったら無料の相談窓口をお使いください。

※本記事は住まいづくりの観点から一般的な情報を提供するものであり、個々のペットの診断・治療に代わるものではありません。歩き方や行動に気になる変化がある場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。

参考文献・出典

(すべて2026年9月27日に編集部が直接確認)

  1. Vinke CM, Godijn M, van der Leij WJR.「Will a hiding box provide stress reduction for shelter cats?」Applied Animal Behaviour Science, 2014, pp.86-93(ユトレヒト大学)。要旨

– 「19 newly arrived shelter cats were randomly divided into two groups, with (N = 10) and without a hiding box (N = 9)」

– 「a significant difference was found between groups in the mean CSS on observation day 3 and 4, whereby the hiding box group had a lower mean CSS (p < 0.01)」「the mean CSS for both groups was equal at day 14, but this level of recovery was already reached around day 3 in the hiding box group.」

– https://ufl.pb.unizin.org/app/uploads/sites/49/2019/10/Vinke.Hiding-box-stress-reduction-for-shelter-cats.2014.pdf (1ページ・本文1,951字)

  1. van der Leij WJR, Selman LDAM, Vernooij JCM, Vinke CM.「The effect of a hiding box on stress levels and body weight in Dutch shelter cats; a randomized controlled trial」PLoS ONE, 2019, 14(10): e0223492

– 「Twenty-three cats between 1 and 10 years of age were randomly divided between the experimental (N = 12) and control group (N = 11) with and without a hiding box.」

– 「Cats from the hiding box group reached a steady state sooner (on Day 2) than cats from the control group (on Day 9).」

– 「nearly all cats in both groups lost significant body weight during the first two weeks」「Cats in the control group lost overall 7.7% of their initial body weight, while cats with a hiding box lost 6.3% of their initial body weight during those 12 days」「15 of the 23 (65%) cats lost 5% or more of their weight」

– 「Cardboard boxes were used as hiding boxes and measured 44 x 31 x 26 cm (L x W x H). These boxes had two entrances (WxH 0.16 x 0.20 m)」「Available floorspace per cage (cage floor plus perching shelf) was respectively 1.01 m 2 and 0.80 m 2 .」

– 「No significant difference was found in the adoption rate between the two groups (p = 0.55).」

– https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0223492 (本文53,127字)

  1. Ellis SLH, Rodan I, Carney HC, Heath S, Rochlitz I, Shearburn LD, Sundahl E, Westropp JL.「AAFP and ISFM Feline Environmental Needs Guidelines」Journal of Feline Medicine and Surgery, 2013; 15: 219–230(米国猫医療協会・国際猫医学会)

– 「Veterinary hospital cages should be large enough to allow intra-cage resources to be spread out, including resting and hiding areas separate from food and water.」「Toileting areas should always be located away from food and water dishes.」

– 「providing a towel to cover a portion of a cage door」「Ideally, cages should not face other cats’ cages.」「A cardboard box placed on its side, to allow easy access and a roof, provides a safe place from a perceived threat.」

– https://www.canadianveterinarians.net/media/04gh2nhv/2013-aafp_isfm-environmental-needs-guidelines.pdf (全12ページ・本文53,601字)

  1. コメリドットコム「アイリスオーヤマ キャットランドケージ 3段 オフホワイト PCLC-703」

– 「●内寸サイズ(約):幅615×奥行475mm」

– https://www.komeri.com/shop/g/g2097711/

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この記事を書いた人

メーカーの仕様書やFAQを複数社ぶん並べて、書いてあることの違いを確かめてから記事にしています。「ペット用」と書いてあっても、中身は各社でけっこう違います。工事が要らないなら要らないと書きますし、間違えたら訂正を出して残します。

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