「うちの子のケージ、小さくないだろうか」——留守番のたびに気になるところです。
この問いに、国が数字で答えられる材料を1つだけ持っていました。しかもそこには、市販ケージ103種の実寸まで載っていました。
当てはめてみると、こうなりました。
| 体格 | 業者向け基準が求める寸法 | 市販ケージで満たすもの |
|---|---|---|
| 小型犬 | 59.36 × 44.52 × 高さ56.38cm | 63種中39種(61.9%) |
| 中型犬 | 94.56 × 70.92 × 高さ86.46cm | 🔴 63種中0種(0.0%) |
| 大型犬 | 137.44 × 103.08 × 高さ126.50cm | 🔴 「大型犬用」13種中0種 |
この数字が何の基準で、どこまで家に当てはめていいのかを、順番に書きます。
くらすけ
「大きさは犬によります」で終わる話だと思ってたでつ。数字が出てくるとは思わなかったでつ。
犬のケージに、数字の基準はあるのか
家庭向けの基準には、ありません。
環境省告示「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」には、ケージの寸法を定めた数値がありません(当メディアでは 犬の留守番の時間|何時間までかは家の条件で決まる と 猫のケージで留守番|何時間までと、置けるトイレの寸法 で、同じ告示を全文取得して確認しています)。
数字があるのは、業者向けのほうです。
動物愛護管理法にもとづく飼養管理基準の省令(令和3年6月1日施行)は、運動スペース分離型でケージ飼育をする場合の寸法をこう定めています[2]。
・犬:タテ(体長の2倍以上)×ヨコ(体長の1.5倍以上)×高さ(体高の2倍以上)
運動スペース一体型(平飼い等)についてはこうです[2]。
・犬:床面積(分離型ケージサイズの6倍以上)×高さ(体高の2倍以上)
🔴 これは第一種動物取扱業者——ペットショップやブリーダーの飼養施設の基準です。一般家庭に適用されるものではありません。「家庭でもこの数字でよい」と国が言っているわけではないことは、先に書いておきます。
それでも使うのは、これが「犬にどれだけの空間が要るか」を日本の制度が数値で書いている、ほぼ唯一の場所だからです。
式の意味と、そこから出てくる床面積を畳に置き換える話は 犬のケージの置き場所|リビング・寝室・和室の選び方 で扱っています。本記事は、その式を「うちの子の体格」と「売られているケージの実寸」に当てる側です。
式に入れる「体長」と「体高」は、どこから取るか
式は体長と体高で決まります。では平均的な犬の体長・体高はいくつなのか。
同じ環境省の委託調査(参考資料2)が、国際畜犬連盟とアメリカ・ケンネルクラブのデータから63犬種を整理しています[1]。
日本で登録数が多い犬種について体長・体高・体重の調査を行った。(中略)一般社団法人ジャパン・ケンネルクラブ(JKC)が公表している、2018 年の犬種別犬籍登録頭数が 100 頭以上である 63 犬種を選定した。
測り方も定義されています[1]。
体長は「肩端または胸骨端より坐骨端までの直線距離」とし、体高は「キ甲部の最高点より地上までの垂直距離」とした。
サイズ区分の平均値(図表3)はこうでした[1]。
| 区分 | 体高 | 体長 | 体重 |
|---|---|---|---|
| 小型犬 | 28.19cm | 29.68cm | 5.72kg |
| 中型犬 | 43.23cm | 47.28cm | 17.36kg |
| 大型犬 | 63.25cm | 68.72cm | 37.95kg |
⚠️ この区分も、国が定義したものではありません。同じ資料に「犬のサイズ区分に明確な定義がないことから、ここでは便宜上、平均体重が 10 kg 未満の犬種を小型犬、10 kg 以上 25 kg 未満を中型犬、25 kg 以上の犬種を大型犬とした」と書かれています[1]。便宜上の区分だと、資料自身が断っています。
式に入れると、こうなります(計算は当編集部)。
| 体格 | タテ(体長×2) | ヨコ(体長×1.5) | 高さ(体高×2) | 床面積 |
|---|---|---|---|---|
| 小型犬 | 59.36cm | 44.52cm | 56.38cm | 0.2643㎡ |
| 中型犬 | 94.56cm | 70.92cm | 86.46cm | 0.6706㎡ |
| 大型犬 | 137.44cm | 103.08cm | 126.50cm | 1.4167㎡ |
売られているケージの実寸は、同じ資料に載っていた
ここからが、この資料のあまり知られていない部分です。
同じ参考資料2の後半は、ケージの調査です[1]。
日本で流通している(2020 年 6 月 23 日時点)犬猫用ケージサイズについて、情報収集を行った。具体的には、ペット用品を取扱うインターネットサイトにて販売されている主な犬猫用ケージの長辺・短辺・高さを調査した(犬用ケージ 103 種、猫用ケージ 52 種)。
製品名つきで103種の実寸が並んでいます。統計値(図表6)はこうでした[1]。
| 区分 | 長辺 | 短辺 | 高さ |
|---|---|---|---|
| 小型・中型犬用(ケージ)N=63 | 80.9cm | 54.7cm | 59.2cm |
| 小型・中型犬用(サークル)N=27 | 103.3cm | 64.5cm | 62.6cm |
| 大型犬用(ケージ)N=13 | 117.0cm | 75.8cm | 86.8cm |
⚠️ 前提を3つ、資料から書き写しておきます[1]。(a) 2020年6月23日時点の通販サイトの表記にもとづくこと (b) サイズ区分が書かれていないケージは「底面の1辺が100cm以上」を大型犬用として整理していること (c) 「高さ」はケージ自体の高さで、キャスター等(平均7〜8cm)を含むものもあること。
当てはめると、体格でまったく違う結果になった
63種を1種ずつ判定しました(判定は当編集部)。
小型犬
要る寸法は 59.36 × 44.52 × 高さ56.38cm。63種のうち39種=61.9%が3辺とも満たしました。
🔴 ただし、余裕はあまりありません。平均値(80.9 × 54.7 × 59.2cm)と比べると、長辺は+21.54cm、短辺は+10.18cm あるのに、高さは+2.82cm しかありません。
中型犬
要る寸法は 94.56 × 70.92 × 高さ86.46cm。63種中、3辺すべてを満たすものは0種でした。
🔴 止めているのは高さです。63種の高さの最大値は80.5cmで、要る86.46cmに5.96cm届きません。長辺や短辺は満たす製品があっても、高さで全部落ちます。
大型犬
要る寸法は 137.44 × 103.08 × 高さ126.50cm。「大型犬用」として載っている13種を1種ずつ見ると、3辺すべてを満たすものは0種でした。
| 製品名 | 長辺 | 短辺 | 高さ | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| プロクレイト 7000 | 135.5 | 90.5 | 100.0 | 3辺とも不足 |
| 超大型ケージ | 183.0 | 116.0 | 121.0 | 長辺○ 短辺○ 高さ−5.50cm |
いちばん大きい「超大型ケージ」でも、高さが5.50cm足りませんでした。
くらすけ
小型犬は6割いけて、中型犬と大型犬はゼロ。同じ「犬用ケージ」の棚なのに、そんなに変わるんでつね。
この結果を、どう読むか
⚠️ 「市販のケージは狭すぎる」という話ではありません。理由が3つあります。
- 🔴 この省令は業者向けです。家庭に適用される基準ではありません(本記事で3度目です)
- 比べているのは平均どうしです。同じ「中型犬」でも体高は個体差があり、資料にも標準偏差11.97cmと書かれています[1]。うちの子の実寸で計算し直す必要があります
- 2020年6月23日時点の調査です。その後に発売された製品は入っていません
それでも、買う前に使える読み方が2つあります。
🔴 1つめ。中型犬に業者向けの寸法を当てると、見る棚が変わります。
図表6の「大型犬用(ケージ)」の平均(117.0 × 75.8 × 86.8cm)は、中型犬の要求(94.56 × 70.92 × 86.46cm)を3辺とも満たします。
ただし高さの余りは+0.34cmです(計算は当編集部)。ほとんど同じ数字でした。
🔴 2つめ。高さは、カタログでいちばん見落とされる辺です。
上の判定で、中型犬も大型犬も落ちた理由は高さでした。売り場では長辺(幅)で選びがちですが、式で最初に足りなくなるのは高さのほうです。
床に置ける広さかどうかは、畳で見る
省令の一体型(運動スペースを含む形)は、分離型の床面積の6倍以上です[2]。畳に置き換えると、こうなります(計算は当編集部。畳1枚=1.62㎡は 犬のケージの置き場所 で確認した不動産の表示規約の下限)。
| 体格 | 分離型の床面積 | 一体型(6倍) | 畳に直すと |
|---|---|---|---|
| 小型犬 | 0.2643㎡ | 1.5858㎡ | 約0.98枚 |
| 中型犬 | 0.6706㎡ | 4.0236㎡ | 約2.48枚 |
| 大型犬 | 1.4167㎡ | 8.5002㎡ | 約5.25枚 |
小型犬なら畳1枚弱、大型犬ならその5.2倍です。
サジェストで実測した「留守番 狭い リビング 犬 の ケージ」(月320・難25)[3]という検索語は、ここに突き当たっている人の言葉だと編集部は読んでいます。部屋のどこに置くかは、この面積が入るかどうかで決まります。置く部屋の選び方は 犬のケージの置き場所|リビング・寝室・和室の選び方、多頭のときの計算は 犬の多頭飼いの部屋レイアウト|ケージの置き方と分ける場所 にあります。
今回、答えを出せなかったこと(🩺)
⚠️ 「留守番のときケージに入れるべきか、フリーにすべきか」——よくある質問の上位を占めるこの問いに、本記事は答えていません。
理由は、それが寸法の話ではないからです。閉じ込めることの是非については、当メディアでは 犬の留守番|出かける前に家で見る5か所 で、獣医学の資料が付けている注意(閉じ込められた犬がケージ・壁・ドアを壊すことがある、という記述)を扱っています。そちらを読んでください。
⚠️ 「かわいそうか」「ストレスにならないか」についても、編集部は判定しません。今回確認した2つの資料は、どちらも設備の寸法についての文書で、犬の情動を扱ったものではありません。行動に気になる変化がある場合は、獣医師に相談する話です。
⚠️ 今回確認できなかったことをそのまま書いておきます。(a) 家庭向けの必要寸法の基準 (b) 2020年7月以降に発売されたケージの寸法 (c) 犬種ごとの体高(図表2には犬種別の値が載っていますが、本記事はサイズ区分の平均だけを使いました)。
よくある質問
Q. 大型犬が留守番できるケージは?(相対需要100・実測1位)
A. 業者向けの省令の寸法(137.44 × 103.08 × 高さ126.50cm)を満たす市販品は、2020年6月23日時点の調査に載っている13種の中にはありませんでした。いちばん大きい「超大型ケージ」(183.0 × 116.0 × 121.0cm)でも高さが5.50cm足りません[1][2]。うちの子の実寸で計算し直したうえで、足りない分をどう埋めるか(サークルと組み合わせる、部屋を区切る等)を考える形になります。
Q. 犬が留守番するときのケージの広さは?
A. 体長から出ます。タテ=体長の2倍以上、ヨコ=体長の1.5倍以上が業者向けの基準です[2]。体長は「肩端または胸骨端より坐骨端までの直線距離」で測ります[1]。
Q. 中型犬を留守番させるケージは?
A. 要る寸法は94.56 × 70.92 × 高さ86.46cm(中型犬の平均で計算)。「小型・中型犬用」の63種では高さが足りず、図表6の平均で見ると「大型犬用」のほうが3辺とも満たしました(高さの余りは+0.34cm)。売り場の名前ではなく、数字で確かめてください。
Q. 犬はケージで何時間くらい留守番できますか?
A. 本記事では扱いません。時間の話は 犬の留守番の時間|何時間までかは家の条件で決まる、共働きの家の不在時間は 犬の留守番と共働き|不在は何時間か、家の準備 にあります。
Q. ケージの高さは何を見ればいいですか?
A. 業者向けの基準では体高の2倍以上です[2]。⚠️ 商品ページの「高さ」にキャスター等が含まれていることがあります(資料に「キャスター等の平均的な高さは7 ~ 8cm ほど」とあります)[1]。内側の高さかどうかを確かめてください。
編集部の結論
- 🔴 犬のケージの大きさを数値で書いている日本の制度は、業者向けの省令だけ。家庭向けには無い[2]
- 🔴 その式を市販ケージ103種に当てると、小型犬は63種中39種(61.9%)が満たし、中型犬は0種、大型犬用13種も0種だった(判定は当編集部・2020年6月23日時点の調査)[1]
- 🔴 落ちる理由はどれも高さ。63種の高さの最大値は80.5cmで、中型犬に要る86.46cmに届かない
- 🔺 中型犬に業者基準を当てるなら、見る棚は「大型犬用」になる。ただし高さの余りは+0.34cm
- 🔺 床面積を畳に直すと、小型犬0.98枚・中型犬2.48枚・大型犬5.25枚(一体型・当編集部の計算)
- ⚠️ 業者向けの基準であり、家庭の義務ではない。うちの子の実寸で計算し直すこと
次に読む
- 犬のケージの置き場所|リビング・寝室・和室の選び方
- 犬の留守番の時間|何時間までかは家の条件で決まる
- 犬の留守番|出かける前に家で見る5か所
- 犬の留守番と共働き|不在は何時間か、家の準備
- 犬の多頭飼いの部屋レイアウト|ケージの置き方と分ける場所
- 犬のしつけの「ハウス」とは?意味と置き場所の決め方
- 犬のトイレトレーニング|サークルの中の置き方と広さ
- 猫のケージで留守番|何時間までと、置けるトイレの寸法
置ける広さがあるかどうかは、写真を見ながら確認できます
畳2.5枚分、5.2枚分と言われても、うちのリビングのどこが空いているかは図面では分かりません。
置き場所が取れない場合、打ち手は「小さいケージにする」だけではありません。部屋を区切る、動線を変える、床の仕上げを変えて犬の居場所を移す——どれが現実的かは、現在の間取り・ドアの位置・段差によって変わります。
工事が必要かどうかの切り分けから相談できます。写真を見ながら確認する形です。
※本記事は住まいづくりの観点から一般的な情報を提供するものであり、個々のペットの診断・治療に代わるものではありません。行動や体調に気になる変化がある場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。
参考文献・出典
- 環境省「犬猫の大きさと流通しているケージに関する調査結果」(参考資料2・三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成)
– 図表3 犬のサイズ区分ごとの体高・体長・体重(平均値): 小型犬 28.19/29.68/5.72、中型犬 43.23/47.28/17.36、大型犬 63.25/68.72/37.95(標準偏差は体高で 6.90/11.97/9.05)
– 「犬のサイズ区分に明確な定義がないことから、ここでは便宜上、平均体重が 10 kg 未満の犬種を小型犬、10 kg 以上 25 kg 未満を中型犬、25 kg 以上の犬種を大型犬とした。」
– 「体長は『肩端または胸骨端より坐骨端までの直線距離』とし、体高は『キ甲部の最高点より地上までの垂直距離』とした。」
– 調査対象: JKC の 2018 年犬種別犬籍登録頭数が 100 頭以上である 63 犬種
– 図表5 流通している犬猫の主なケージサイズ(犬用ケージ 103 種、猫用ケージ 52 種・2020 年 6 月 23 日時点)。大型犬用(ケージ)13種の実寸を含む(最大は「超大型ケージ」183.0×116.0×121.0cm、次点「プロクレイト 7000」135.5×90.5×100.0cm)
– 図表6 流通しているケージサイズの統計値: 小型・中型犬用(ケージ)N=63 80.9/54.7/面積0.5/高さ59.2、小型・中型犬用(サークル)N=27 103.3/64.5/0.7/62.6、大型犬用(ケージ)N=13 117.0/75.8/0.9/86.8
– 「サイズ区分が記載されていないケージについては、底面の 1 辺が 100 cm 以上のケージを『大型犬用』、それ以外を『小型・中型犬用』とした。」
– 「ここで示される『高さ』とはケージ自体の高さを表しており、キャスター等の高さを含むケージも存在する」「キャスター等の平均的な高さは7 ~ 8cm ほど」
– https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/tekisei/h29_06/ref02.pdf (確認日 2026-09-17・全11ページ・抽出16,909字を当編集部が取得して確認)
- 環境省「動物愛護管理法の飼養管理基準に関する省令の概要(第3次答申)」(令和3年6月1日施行)
– 「■運動スペース分離型飼養等(ケージ飼育等)を行う際のケージ等の基準 <寝床や休息場所となるケージ> ・犬:タテ(体長の2倍以上)×ヨコ(体長の1.5倍以上)×高さ(体高の2倍以上)」
– 「■運動スペース一体型飼養等(平飼い等)を行う際のケージ等の基準 ・犬:床面積(分離型ケージサイズの6倍以上)×高さ(体高の2倍以上)」
– 「※犬の体長30cmの場合」の図示: 分離型 60cm×45cm / 一体型 180cm×90cm
– ⚠️ 第一種動物取扱業者の飼養施設の基準であり、一般家庭の基準ではない
– https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/laws/nt_r030601_1.pdf (確認日 2026-09-17・全8ページ・抽出5,754字を当編集部が取得して確認)
- ラッコキーワード実測(2026-09-17・当セッション実施・計2クレジット)
– 主軸KW『犬 留守番 ケージ』月間720/難易度24/CPC $0.12/競合性92
– サジェスト68件(うち月間検索数が付いたもの: 犬 お 留守番 ケージ390/留守番 狭い リビング 犬 の ケージ320/犬 留守番 長時間 ケージ260/犬 お 留守番 ケージ 放し飼い140/犬 留守番 ケージ 大きさ110/犬 留守番 ケージ 広さ90/犬 留守番 ケージ かわいそう90/犬 留守番 ケージ 何時間90/犬 留守番 ケージ か フリー か50/大型 犬 留守番 ケージ50/共働き 犬 留守番 ケージ50 ほか)
– よくある質問47件・相対需要の合計623(1位「大型犬が留守番できるケージは?」100)
– `docs/research-notes/2026-09-17-rakko-keyword-G-100.md`

